486日ぶりに、幕内土俵に帰ってきた。大関経験者で西十両4枚目の朝乃山(31=高砂)が、左膝に大けがを負った昨年7月17日の名古屋場所4日目、一山本戦で敗れて以来の幕内土俵で、西前頭14枚目時疾風を寄り切り。取組前まで幕内で5勝1敗と好調の相手を破り、5連勝を飾った。それでも今場所10勝以上で来場所の再入幕の可能性が出てくるだけに、感慨はなし。幕内後半戦の常連へと戻る未来を見据えていた。
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幕内土俵でも、歓声や拍手は屈指の多さだった。朝乃山は立ち合いで、まだ膝に大きなサポーターを施す左足で踏み込んだ。器用に取ることも、けがして相撲を変えることもできない。相撲巧者で、けんか四つの時疾風に、なかなか右を差す得意の形になれない。それでも前に出続けた。流れの中で、ようやく右を差すと最後は体を投げ出して寄り切った。武骨で愚直な姿勢は、九州のファンの心を打ち、大歓声となった。
486日ぶりの幕内土俵を「十両よりも、お客さんも入っていて、その人たちが見ている前で勝ててうれしい」と、かみしめた。昨年名古屋場所で左膝前十字靱帯(じんたい)断裂などの大けがを負い、長期離脱。三段目から再起し、1年4カ月ぶりにたどり着いた幕内土俵だが「いずれは15日間、幕内で取りたいので」と通過点を強調。感慨深い思いなどはなかった。
昨年の九州場所は全休だったが九州入りし、基礎運動などで汗を流していた。七輪を使って、筋力を取り戻すため、タンパク質豊富な鶏の胸肉やささみなどを焼くのが「唯一の楽しみ」と、先の見えない未来を紛らわした。それが今場所で2桁白星を挙げれば、再入幕の可能性が出てくる位置まで番付を戻した。
この日の朝稽古後は「今場所で再入幕を決めたい自分がいる。応援してくれる方々のためにも恩返ししたい」と決意表明した。先月末、九州入り前に富山市の実家に寄り、仏壇に手を合わせた。「良い年を迎えるよう頑張ります」。21年8月に64歳で亡くなった父石橋靖さんにも、来年初場所の再入幕を誓った。幕内で487日ぶりに勝ち名乗りを受け「また(午後)5時以降に取りたい」と力説。幕内後半土俵の復帰を目指すからこそ、一喜一憂していられない。【高田文太】

