このシリーズの第1作「レイダーズ 失われた聖櫃」の撮影時、ハリソン・フォードは38歳だった。

俳優志望をいったんあきらめ、大工への転職を経て、ジョージ・ルーカス監督に見いだされて「アメリカン・グラフィティ」に出演したのはこの7年前だ。考古学者にして冒険家の主人公には、若さよりしたたかな印象の方が強かった。

「レイダース-」の大ヒットを得てシリーズは3年、5年、9年としだいに間隔を広げながら続き、前作から15年。1作目から42年の時を経て最後の作品とうたわれるのが「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」(6月30日公開)だ。

老境に達したインディが、かつての盟友の娘によって再び冒険の旅にいざなわれる物語。意外なことに80歳のフォードに年寄りの冷や水的な悲壮感はない。むしろ「50代の元気なおじさん」のていでひょうひょうとスピーディーなアクションシーンをこなしていく。

折々見せる照れたような表情に、すでに貫禄をまとっていた第1作よりむしろ若々しく見える不思議な感じがあった。

舞台はアポロ11号が月面着陸した69年。ニューヨークで行われたその祝賀パレードに乱入する序盤のチェイスシーンの何たるスケール感。製作総指揮のルーカス=スピルバーグを後ろ盾に「フォードVSフェラーリ」(19年)のジェームズ・マンゴールド監督のやりたい放題感が気持ちいい。

モロッコへ欧州へと、世界を一変させる力を持つ「運命のダイヤル」を巡る冒険はスケールをかさ増ししながら展開していく。そして、想像もしなかったところまで、インディの旅は行き着いて…。

その武器となる「万能のムチ」や、巨大なムシやヘビ的な生物の「お約束の鳥肌シーン」もこれまで以上にメリハリがついている。

敵役はシリーズお決まりのナチスの生き残りだが、「ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密」(22年)の旬の悪役マッツ・ミケルセンがジワッと不気味さをにじませている。

インディを旅にいざなう娘には、ぶっ飛び感の強かったドラマ「キリング・イヴ」の製作・脚本を務めた英国の才人フィービー・ウォーラー=ブリッジ。ひねりを効かせた好演だ。そして、終盤にはオールドファンにはうれしいサプライズ出演がある。こちらもフォードに負けず劣らず若々しい。「最後」というのが惜しいくらいの余韻のあるエンディングだ。

蛇足になるが、回想シーンでスタートする序盤。特殊効果なのか、あるいはメークなのか。若き日のインディのツヤツヤした顔の、あまりの自然さも何とも不思議だった。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)