歌舞伎座で「猿若祭二月大歌舞伎」を見てきました。17代目中村勘三郎さんが「猿若祭」を始めてから今年で50周年。中村鶴松(30)の「舞鶴」襲名披露は延期となりましたが、昼の部「弥栄芝居賑」では中村勘九郎(44)七之助(42)を中心に中村屋一門が勢ぞろいしました。そこで片岡仁左衛門(81)から驚きの発言がありました。「私の目が黒いうちに早く19代目中村勘三郎を襲名してほしい」と。

仁左衛門と、14年前に57歳の若さで亡くなった18代目勘三郎さんとは、11歳ほどの年の差こそあったものの、盟友ともいえる深い絆で結ばれていました。18代目が始めた「平成中村座」にも出演し、18代目の本葬では弔辞を読みました。原稿を持たずに、遺影をまっすぐに見つめた仁左衛門が「哲(のり)ちゃん(18代目の本名は哲明)。僕は部分的に濃い友達はほかにもいてくださいますが、全部濃い友達は哲ちゃん1人です」と語りかけていた姿がとても印象的でした。

そんな仁左衛門だからこそ、盟友の長男の「19代目襲名」を熱望する発言になったのでしょう。当の勘九郎は「それはまだ先のことでございます」と交わしたものの、「(熱望発言は)厳しかった祖父も父もさぞ喜んでいると思います。それまでおじさまも、お元気でいていただきたい」と応じていました。

18代目襲名は、父17代目が亡くなってから17年後で、49歳の時でした。何より、仁左衛門が「私の目が黒いうちに」と言った真意は、18代目の盟友として、19代目襲名披露興行に出演し、「口上」に並ぶという強い思いがあるのでしょう。歌舞伎界の大御所でもある仁左衛門の発言には重いものがあり、ここ数年のうちに「19代目襲名」はあると思います。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)