20年9月深夜2時、東京・渋谷。志尊淳が、人に声をかけては断られ、街をさまよい歩く場面から映画は始まる。「どうしたら話してくれるんだろう?」と自問自答する志尊は、ようやく応じた看護学生と友人男性に、コロナ禍で変化した生活、日常を尋ねる。

企画は当初、志尊と有村架純が主演の「保育士T」(森ガキ侑大監督)という劇映画だったが、昨年4月に1回目の緊急事態宣言が発出され、保育園から撮影許可を得られないなどして頓挫。河村光庸エグゼクティブプロデューサーは、2人がエッセンシャルワーカーと呼ばれる保育士、農家などを訪問し、仕事や生活の変容を取材するドキュメンタリーにするよう提案。1年かけて撮影、製作された。

志尊と有村は保育所で、おむつ替えなどを手伝いつつ子供と遊び、農家では落花生を一緒に掘る。その中で、職業とは何かを考え、個室で2人だけで行った対談で思いをぶつけ合う。「何だろうね…この仕事って。人とか仕事とかって何だろうって考える」という有村の言葉が胸に刺さる。

有村と志尊の対談が7分弱にとどまった点と、2人が取材した以外の部分の内容に、浅さを感じるのは否めない。ただ、プロの取材者ではない2人が試行錯誤しながら取材し、悩み、語る本音は味がある。コロナ禍でしか成立し得ないであろう映像は、後に資料的価値を持つのではないか?【村上幸将】(このコラムの更新は毎週日曜日です)