「けったくそわる~」「しゃあないな~」。ド派手な化粧にコッテコテの大阪弁を話す木村佳乃が主演するフジテレビ系連続ドラマ「後妻業」(火曜午後9時)。1月29日に放送された第2話の平均視聴率は関西地区では11・9%(ビデオリサーチ調べ)をマークし、初回13・7%から2話連続で2ケタ台を記録しました。関東地区(初回8・7%、第2話6・5%)。全国ネットの連ドラで大阪弁をベースにするのは珍しく、大阪弁がキーワードになっています。制作するカンテレの杉浦史明プロデューサー(48)にドラマの舞台裏を聞きました。後妻業の収録では「ルール」があります。スタッフが出演者に話しかけるときは大阪弁で話しかけなければいけません。大阪出身の杉浦氏は出演者との初顔合わせのときこう言ったそうです。

「大阪弁しかしゃべれないのでお許しください。普段から大阪弁でしゃべりまひょ」

ドラマは大阪が舞台。木村が演じる武内小夜子は資産家の高齢男性と結婚し、その死後に多額の遺産を手にする「後妻業」がなりわい。後妻業の黒幕となる結婚相談所の社長、柏木亨を高橋克典が演じています。 2人が大阪弁で「案件」についての会話は見ごたえがあります。

「心配してくれておおきに。でもあんたが心配なんは、うちやのうて金やろ」。小夜子の言葉に柏木は「その金を生むおまえが大事なんや」。ワル同士の掛け合いは、生臭くてリアルですが、大阪弁で言うと、なぜかコミカルに感じてしまいます。

初回放送後には「大阪弁がヘン」なんて厳しい声もありました。「大阪弁には答えがないような気がしている。北摂、大阪市内、河内、同じ大阪でも違う。何が答えなのか、あまり分からない。それぞれに大阪弁を解釈してもらう。主役クラス4人の大阪弁でいいかなと思っています」と杉浦氏。

父が後妻業のターゲットとなった小夜子のライバル、中瀬朋美役の木村多江、朋美の大学時代の先輩で元マル暴刑事の私立探偵、本多芳則役の伊原剛志。大阪が地元の伊原を除き、主役クラスには通常のドラマよりも早めに大阪弁の方言指導を受けてもらったそうです。

小夜子とバトルを繰り広げる朋美は大阪で生まれ育ちましたが、高校から上京し、東京で建設設計事務所を共同経営。ドラマでは東京弁を話します。ところが小夜子との言い争いのシーンでは突然、「あんたな!」と大阪弁が飛び出します。小夜子という型破りな女性と絡み合うと、ぱっと大阪弁が出てくる演出です。W木村の対決シーンも見どころです。

小夜子の参謀役の高橋は尊敬しているのが漫才師の故横山やすしさん。当初、高橋が大阪弁でやりたかったのは「怒るでっ、しかし!」だったそうですが、杉浦氏らが「あそこまでは大阪弁でも使わないので、それはおさえてください」と“説得”したそうです。出演者がそれぞれに大阪弁にこだわりがあるようです。小夜子の悪事の過去をつかんだ伊原のドスの利いた大阪弁にはゾクッとしました。「せやからって悪人を許してええわけちゃうで」。こちらはさすがネーティブです。使い方によっては凄(すご)みも出ます。 高齢化を背景にした社会派ドラマでもあり、喜劇でもあります。ドラマでは重要な役割を果たしている大阪弁。収録が進むにつれ、出演者の大阪弁は上達しているようです。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)