新生月組を率いるトップ月城かなと、相手娘役海乃美月の新コンビは、本拠地お披露目となった「今夜、ロマンス劇場で」「FULL SWING!」の兵庫・宝塚大劇場公演を完走。今月25日に東京宝塚劇場の開幕(3月27日まで)を控える。トップコンビとしては珍しい2学年差。芝居演出の小柳奈穂子氏、ショー演出の三木章雄氏も、芝居巧者な2人の「相乗効果」に手応えを感じている。

    ◇    ◇    ◇  

芝居は、綾瀬はるかと坂口健太郎で18年に公開されたヒット映画「今夜、ロマンス劇場で」の舞台化。月城は助監督の牧野健司を等身大で演じ、海乃はモノクロ映画から飛び出したお嬢さま役。芝居巧者コンビらしい技量を発揮している。

芝居演出の小柳氏は、月城を「文系の人」「思慮深い人」と表現する。今作主人公は、失敗続きながら映画監督を夢見る青年。宝塚王道のヒーローではない。青年期から老年期まで年齢幅が広く「一生の長い部分。月城の演技力が生かせる」と考えたと言う。

小柳氏は、海乃には「あねご肌というか明るいところも、引っ張っていってくれるところもある」とも見る。もともと、芝居心のある2人には「ビジュアルとしてもグッときます。(互いに魅力を)増幅している。倍になっていけるコンビ」ととらえる。

ショーの演出を担う三木氏は、トップ月城を「正統派」と評す。「『手が届かない』『あこがれ』のような魅力がある。宝塚の王道、昔ながらの、あこがれの対象になっている」。月城が雪組時代、バウ・ワークショップの演出を手がけており、当時から感じていたという。実際、トップ就任前に、春日野八千代さんが演じた「ダル・レークの恋」に主演し、好評を得た。

クラシカルな美を放つ月城、娘役としては遅い就任になった海乃にも、小柳氏が言うように「培ってきた娘役芸」がある。宝塚史1世紀以上の原点にも近いコンビが新生月組を率いる。

実力派の鳳月杏は、銀幕のスター俊藤龍之介を好演。星組異動が発表されたダンサーの暁千星は、下級生時代から注目されるスター性を生かしたきらめきを放ち、新人時代から抜群の演技力を誇る風間柚乃は主人公の同僚役で、トップ月城と渡り合う芝居心を発揮している。【村上久美子】