花組トップ柚香光がリストにふんした「巡礼の年~リスト・フェレンツ、魂の彷徨~」、しゃれ者が集う“粋”を表現した「Fashionable Empire」は、11日に兵庫・宝塚大劇場公演を終えた。いまだ収まらぬコロナ禍で見えない敵との闘いも続く中での完走。東京宝塚劇場では、今月30日の開幕(9月4日まで)を控える。

ひときわ華やかなオーラを放つ人気トップ。柚香が芝居でふんしたのは、女性ファンを失神させたという伝説も残るピアニストで作曲家のリスト。芝居演出の生田大和氏は、かつて取材を進めていたリストと柚香がフィットしたと説明した。

柚香が下級生時代、誰もいない教室で1人、ピアノを弾いていた姿が印象に残っていたという。今作冒頭で、ピアノを弾き語る場面は「お客さまも待ち望んでいるか、と。弾かせようと思っていた」と明かした。

少年時代に神童と呼ばれつつも、パリ音楽院で挫折、貴族へのあこがれと、自身の本質からの隔たり…超絶技巧とたたえられた天才的技量、恵まれた容姿の裏にある苦悩。生田氏は、柚香がリスト像を「表裏を巧みに、リアリティーをもって演じてくれている」と、見る。トップとして作品を重ねる柚香には、組を率いるリーダーとして「いい背中の見せ方をしている」と頼もしくも感じている。

そのリストと魂でひかれあうマリー・ダグー伯爵夫人は、トップ娘役の星風まどか。リストのライバルであり親友ショパン役は、柚香と同期の人気スター水美舞斗が熱演した。

生田氏は95分という時間枠では、ショパンの天才ぶりまでは描ききれていないと言いつつも、水美について「スターらしい内側から出てくる輝きが、補ってくれている」と感謝した。

リストとからむ男装の女性作家ジョルジュは、人気スター永久輝せあが妖しさもまとった演技で魅了。後にマリーらと革命の道へ進むジラルダンは、進境著しい聖乃あすかが、凜(りん)とした演技力で観客を魅了した。また、今作で退団する飛龍つかさは、星風演じるヒロインの夫、ダグー伯爵を好演している。

柚香は、花組を率いて本拠4作目の充実期。その団結力は、ショーでも発揮され、柚香、星風のトップコンビに水美と、ダンサーぞろいの花組だけに、力強くも艶やかな世界観が表現されている。【村上久美子】