参議院選挙。中間段階だが、前回と比べ期日前投票が1・2倍に増えているという。コロナ禍もあり、政治への関心が膨らむ中、今まで以上に盛り上がっているのは間違いない。また、SNSを中心に賑わせている連中などもいて、普段政治に興味のない若者も参加しているのではないかと思う。街中いたるところにある看板を見ると、本当に大丈夫なの?と思う候補者も多いが、主義主張は自由、改めて平和な国だと思う。自身も今年2月に政治討論番組を題材にした舞台「政見放送」を企画・演出したことで、政治欲が高まりつつ、開票日が本当に待ち遠しい。

政治と映画。ドキュメンタリー映画「選挙」や「なぜ君は総理大臣になれないのか」は、普段見ることのない候補者たちの生活に迫っていてとても興味深い内容だった。これらは直接的だが、政治と密接する社会派と呼ばれる映画も昔からたくさん存在する。隣国だが、アカデミー賞を受賞した「パラサイト」も格差社会の問題を扱った作品である。モノづくりをする上で社会問題は切っても切り離せない関係なのかもしれない。

そこで1本、公開中の映画を紹介したい。タイトルは「PLAN 75」、舞台は近い将来の日本。75歳以上から自らの生死を選択できる施策(プラン75)が開始され、当事者である高齢者や若い世代が何を選択していくのかを問いかける作品である。3年後の2025年には65歳の高齢者が30%を超え、100%ないとは言えない世界、政治に興味のない層も映画を通して今後の日本のことを考える機会になると思う。丁寧に作られた良作であり、選挙期間中のこの時期にぜひとも観て欲しい作品である。

そして今回紹介したいのはその「PLAN 75」に出演している河合優実(21)。物語の中では死を選んだお年寄りを電話でサポートする成宮瑤子役を演じる。主演は倍賞千恵子、プラン75を検討し始める角谷ミチ役を演じ、瑤子と出会い親密に絡んでいくことになる。

倍賞さんに関しては、こちらで語るのも失礼なぐらいの大女優、スクリーンで演技をしている姿を観れただけでも満足な上、本当に素晴らしいの一言。そんな大女優を前に、堂々の演技を披露しているのが彼女。2019年にデビューした後、映画「サマーフィルムにのって」「由宇子の天秤」で数々の新人賞に輝き、他にも「佐々木、イン、マイマイン」「女子高生に殺されたい」、ドラマ「17才の帝国」と話題作に次々と出演する。

本作では最初は繊細な現代の若者といった印象だったが、ミチと出会うことで少しずつ変化し、終盤の電話でのやりとりのシーンでは、瑤子という登場人物とシンクロしているようだった。話題の作品でのよい演技が関係者の目に留まり、次なる作品に出演し続ける、理想の俳優像といったところだろうか。

選挙もしかりだが、しかるべき場所でよいパフォーマンスをすることで確実に次につながる。すごく当たり前のことだが、彼女を見てキャスティングされる必然性に改めて気づかされた。まだ21歳、スター候補としての彼女に1票を投じたいと思う。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーに。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。今年は2月に演出舞台「政見放送」を上演、5月20日には最新監督映画「さよならグッド・バイ」が公開された。8月には演出舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ」の製作も決定している。カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営中。