1993年。今から29年前、大型不況が深刻化するが、Jリーグブームが起きるなどまだまだバブルの雰囲気を残していた時代。後半ロスタイムでW杯を逃すという”ドーハの悲劇”もこの年に起こる。そして、その時MFとしてピッチに立っていたのが、現日本代表監督の森保一。29年の時を経て、カタールの地に再チャレンジとなんともドラマチックな展開である。

そして芸能界に目を移すと、男闘呼組の解散が思い出される。1988年でデビューした4人編成のロックバンド。メンバーは成田昭次、高橋和也、岡本健一、前田耕陽の4人。オリコン1位のヒット曲多数、「日本レコード大賞」では最優秀新人賞を獲得。紅白歌合戦にも出場し、東京ドームでライブを行うなど当時誰もが認めるスーパーグループであった。

解散後は、俳優業であったりバンドを組んだりとおのおの活動を行う。そして29年の時を経て今年活動を再開し、大きなニュースとなった。10年でも20年でもなく30年(キリよく)、懐かしいを通り越し、それぞれがさまざまなジャンルで頑張ってきたからこそ出会える奇跡である。

さしずめ、29年分の答え合わせといったところだろうか。先週末、縁あってライブを見させてもらったが、息のあった演奏に加え、29年分の何かがそこに存在しており、会場のファンとともに最高の瞬間に立ち会えた。

そこで今回紹介したいのは男闘呼組でボーカルとベースを務める高橋和也(53)。先ほど縁あってと記述したが、新作「追想ジャーニー」に出演してもらっている。男闘呼組結成前から俳優業を開始し、メンバー全員で主演した「ロックよ、静かに流れよ」をはじめ数多くの作品に出演。グループ時代のとがったイメージとは違い、役柄の幅が広く演技派俳優として映画やドラマファンにはおなじみであろう。

個人的には、映画の世界を目指すきっかけにもなった「ハッシュ!」で一ファンになり、今回出演が決まった時はただただうれしかった。近年では、是枝裕和や呉美保、武正晴に藤井道人と映画界を引っ張る監督たちの作品に立て続けに出演。作品数や実績をみると、グループ出身俳優の第一人者と言ってもいいだろう。

そして「追想ジャーニー」では、藤原大祐演じる主人公・文也の30年後の”謎の男”を演じてもらった。スターを目指す文也と比べ、どこか卑屈でイケてないおじさん役、ステージ上で見たスターなその姿とは違い、改めてすごいなと感じた。

そして、映画の終盤に母親から放たれるとあるセリフがある。この一言で、謎の男は報われるが、それが男闘呼組再結成とどこかリンクしているのではと話題になっている。

そういえば、作品が発表された時のコメントで「最近は役が『俺を演じろ!』と、向こうからやって来る気がする」とあった。撮影時には意識していなかったが、再結成と映画のタイミングが重なり、まさに導かれるように出演頂いた作品に違いない。今後、俳優としてはもちろん、男闘呼組としての活動にも大いに期待したい。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営している。最新作「追想ジャーニー」が11月11日から池袋シネマ・ロサ他にて公開。

(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)