長渕剛(58)が、8月22日夜から静岡県富士宮市の富士山麓で開催する「10万人オールナイト・ライヴ2015 in 富士山麓」。この一大イベントに向け、さまざまな角度、証言から連載する。

 長渕の曲を愛し、叫びに共感する人々は、芸能人や文化人にも数多い。それぞれが長渕の思い出、オールナイトライブへの期待などを語った。第2章「なぜ長渕剛なのか」は、くりぃむしちゅー上田晋也(45)から開始する。

 上田は中学時代に長渕を聞き始めた。高3の時に故郷・熊本で、初めてコンサートへ行った。「ろくなもんじゃねえ」を歌った長渕が、最後に客席に投げたハーモニカを伸び上がってキャッチした。「今でも棚に飾ってある。その日は興奮して、どんなルートで帰ったか覚えていない」と振り返る。

 それから19年たった、2007年。長渕の面識を得ていた上田は、オフの日に長野のコンサート会場まで駆けつけた。「よく来たな。よかったら、今日一緒に歌おうか」と、半ば脅された(笑い)。客席で見ていると「今日は友達が東京から来てる」とステージに上げられて、一緒に「ろくなもんじゃねえ」を熱唱した。「運命を感じる。一生懸命応援したり、好きになったものは振り向いてくれるんだと」と言う。

 鍛えあげた肉体、強烈な自己主張。こわもてのイメージもある長渕。上田は「違う。怖いと思ったことはない。すごく優しい」。数年前、仕事でへこんで、夜中に長渕のDVDを見て励まされ、感謝の言葉をメールにした。「すぐに長文のメールが返ってきた。『お前、ひょっとして、こんなことでへこんでるんじゃ』と。何も言ってないのに、全部当たってる」。食事に招待され、悩みを聞かれた。そのまま、自宅へ招かれて、夫妻でもてなしてもらった。

 カラオケでは、後輩たちと「長渕縛り」で歌いまくる。「長渕さん以外の音楽は聞かない。ご本人にも言った。『長渕さんの曲って(たばこの)ロングピースみたいですね』って。こんなキツいの吸っちゃったら、他の吸っても効かない。他の人は聞けない」。

 22日、長渕は富士山麓に10万人を集めて歌う。「戦国時代だったら、合戦みたいなもの。1対10万みたいな。まあ、敵ではないですけど。壮大な、時代を超えたスペクタクル。勝手な臆測なんですけど、閉塞(へいそく)感に包まれて、ばらばらな日本人を、長渕さんがまとまろうよと呼び掛けているんだと思う。霊峰富士で現代の人とつながりつつ、歴史ともつながる。そして、新しい未来を引っ張り出して来る。それが、長渕さんのおっしゃる太陽を引きずり出すみたいなことなのかな」。

 長渕にいつも「『お前はちゃんと、限界を超えるくらいまでやってるのか』と突きつけられている気がする。いつも『やってます!』ってふりだけしてますけど(笑い)。長渕さんの歌とか言葉は『抗へこみ剤』みたいなもの。へこんでる時には、特に効きますね」と話している。【特別取材班】

 ◆上田晋也(うえだ・しんや)1970年(昭45)5月7日、熊本市生まれ。早大在学中の91年に熊本・済々黌高の同級生だった有田哲平とお笑いコンビ、海砂利水魚を結成。01年くりぃむしちゅーに改名。レギュラーは日本テレビ系「Going!Sports&News」(土、日曜午後11時55分)、同「おしゃれイズム」(日曜午後10時)など。血液型O。