今年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した「万引き家族」の是枝裕和監督が、林芳正文科相からの祝意を「公権力とは潔く距離を保つ」との考えから辞退を表明した。

 林文科相は7日の参院文教科学委員会で、是枝監督に面会を呼び掛け、祝意を伝える意向を明らかにした。

 これを受け是枝監督は同日、「『祝意』に関して」と題した文書を公式サイトに掲載。「もちろん、例えば敗戦からの復興の時期に黒沢明の『羅生門』がベニスで金獅子賞を獲得したことや、神戸の震災のあとに活躍したオリックスの球団と選手を顕彰することの意味や価値を否定するものでは全くありません」と前置きした上で、「しかし、映画がかつて、『国益』や『国策』と一体化し、大きな不幸を招いた過去の反省に立つならば、大げさなようですがこのような『平時』においても公権力(それが保守でもリベラルでも)とは潔く距離を保つというのが正しい振る舞いなのではないかと考えています」とした。

 パルムドールを獲得した是枝氏をめぐっては、フランス有力紙フィガロが、日本政府による祝意が示されていないことを疑問視する記事を掲載、国際的にも波紋を広げている。是枝監督はこうした騒ぎを収束させるために今回、辞退を表明したと説明。「なので、このことを巡る左右両派!のバトルは終わりにして頂きたい」と呼びかけた。