歌舞伎俳優中村勘九郎(37)の長男中村勘太郎(8)次男中村長三郎(6)が、「八月納涼歌舞伎」(東京・歌舞伎座、27日まで)の第1部「伽羅(めいぼく)先代萩」で共演している。兄弟そろって歌舞伎座に出演するのは2年半ぶりで、連日大盛況だ。このほど2人に話を聞いた。

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夏恒例の納涼歌舞伎は、勘太郎、長三郎の祖父、故中村勘三郎さんらが中心になって始めた。中村屋にとって大切な興行での兄弟2人の共演だ。

「伽羅先代萩」は、大名家のお家騒動を描いたもの。千松、鶴千代という子供2人が登場するが、両役とも子役の大役。せりふや動きも多く、1時間以上芝居をし続ける。千松役の勘太郎、鶴千代役の長三郎はともに「難しいところはいっぱいありすぎます」。

1カ月以上稽古を続けてきた。稽古を見る父勘九郎について、勘太郎は「お芝居に集中するとすごく怖い。ダメ出し、良かったことをたくさん言ってくれる」と教えてくれた。長三郎はせりふ100回を課され、泣きながら稽古をしたこともあったという。

兄弟共演は昨年11月以来9カ月ぶり。そろって歌舞伎座に出演するのは、2人が今の名前になった17年2月の初舞台以来だ。勘太郎は「1人でも楽しいけど、2人でもすごく楽しい」とうれしそうだ。弟のこともよく見ており「いつもここ(首のうしろ)を触ってるけど、今日は1回もしなかった」と褒めた。

長三郎も「楽しい」と笑い、公演が終わった後のごほうびは人気アニメ「ムシ忍」のおもちゃに決めていると言い、舞台を楽しんでいる様子だった。

初日の舞台は大成功だった。稽古の時「ちょっと合わなかったね」(勘太郎)と言っていた、2人で歌う場面はぴたりとそろった。「中村屋!」の掛け声と、大きな拍手が何度も起こり、観客は「所作がとてもきれい。ずいぶんお稽古したんだと感心しました」「涙、涙でした」などと感想を話してくれた。

主演する叔父中村七之助(36)は「父が生きていたらどう思うだろうと、ぐっときました」と感慨を込めた。2人は「楽(=千秋楽)まで頑張ります」と意気込んでいる。成長する姿を勘三郎さんもどこかで見ているだろう。【小林千穂】

▽勘太郎、長三郎の共演は3回目。17年2月歌舞伎座「猿若祭二月大歌舞伎」の「門出二人桃太郎」で、勘太郎、長三郎として初舞台を踏んだ。2回目は昨年11月、東京・浅草寺境内「平成中村座 十一月大歌舞伎」の「弥栄(いやさかえ)芝居賑」。両演目とも全体で40分弱。今回の「伽羅先代萩」は全体で約1時間45分。2人が共演した演目の中では最も長く、出演時間も1時間以上と最も長い。