篠田正浩監督(90)、歌舞伎俳優坂東玉三郎(71)が10日、東京・渋谷のユーロスペースで、映画「夜叉ケ池 4Kデジタルリマスター版」の舞台あいさつに出席した。

篠田監督が42年前、玉三郎主演に、泉鏡花の原作に取り組んだ作品をデジタル技術でよみがえらせた。開催中のカンヌ映画祭の名画を集めた「クラシック部門」でも上映されたばかり。

玉三郎の一人二役、幻想的な物語、大洪水シーンなど公開時にも大きな話題になった作品で、篠田監督は「この映画には、いろんな才能を持ち、技術を学ぶ人たちが集まり越境して作った。越境者たちのユートピアです」と振り返った。

4Kデジタルの映像美には「コングとゴジラが戦っているのを見ている人たちが『夜叉ケ池』を見るわけないよなあ、と思っていたが、松竹は大きな仕事をしてくれました」と喜んだ。

現在、篠田監督の生誕90年を記念した特集上映も行っている。篠田監督は「映画監督として振り乱して映画の中に生きている時代の作品群です。あんな勢いでやれと言われても無理です」と苦笑いしたが「『夜叉ケ池』を作った気力はどこかに眠っているはず。だから私のユートピアを探そうと思っています」と語った。

玉三郎は、「夜叉ケ池」公開時は29歳。初めて映画に出演した作品でもあり、「思い出深い作品です。映画こそ、時を超えて見る喜びがある。私が29歳の至らぬ時の作品ですが、時間と空間を共有していただければ」と語った。

昨年篠田監督と玉三郎が再会した時に、「夜叉ケ池」を今の時代の人たちに見てほしいという思いで一致し、4Kデジタルリマスターのプロジェクトが始まった。