フリーアナウンサー古舘伊知郎(66)が、16日に単行本「MC論」(ワニブックス)を出版する。テレビの司会として1960年代から活躍した故大橋巨泉氏をはじめ、タモリ、たけし、さんまのビッグ3、とんねるず、ダウンタウン、中居正広、みのもんた、関口宏、小倉智昭、黒柳徹子、安住紳一郎、羽鳥慎一、村上信五などを取り上げ、その手法、影響力などを分析した“交友録”でもある。

   ◇   ◇   ◇

元々、昔ながらの司会というものは、会を司(つかさど)るために全責任を背負っていた。進行役も担うからふざけたことは言わない。そして、ふざけたことを望まれもしない。

映画が斜陽になって、テレビなるよくわからないメディアが登場したよと。こっちで楽しんでくださいねっていう呼び込みだから、司会というのは。ホームシアターの時代が来たので、僕なんかちっちゃいころからテレビで映画を見ていた。

司会、及びその中にインクルードされているんですよね、進行が。司会と進行、それを全部一人でやるわけだから、きちんとしたものになっちゃうんです。僕なんか、今思えば「クイズ日本人の質問」っていう番組を昔、10年間、NHKででやらせてもらいましたけど。2003年ぐらいまで10年間。

休日の19時すぎ、1人で立ってです。だから昭和の編成で、昭和の古き良き時代の司会進行を1人でやってましたから。“司会進行”する人を司会者と呼んだ時代だから、きちんとスーツを着て、ネクタイを締めて、立って「皆様こんにちは、こんばんは」ってやっていた。

それが、だんだん平成に入ってきて、どんどん変容してきた。そこで、やっぱり(大橋)巨泉さんなんですよね。昭和から平成にかけて活躍した。別にアナウンサーじゃなくても、しゃべりのプロでもなくて、放送作家と言う稼業を張っている人の始まり。放送作家であるっていうのは企画者であり、まさにMC、マスターオブセレモニーの先駆け。

で、MCの先駆けではあるんだけど、まさにセレブなんですね。司会をやるけど、進行は隣の女性がやったりして。でも、元々は古い時代に立ち上がってるわけだから、司会進行の時代だからね。ちょっと進行にも及んだりして、台本見たりして。それでもって毒吐いたりしてね。

適格者でもあり、なんだったら構成もやっているんだから、当然わがまま。“わがまま巨泉”と言われて当たり前で、全部やってんだろうから、千手観音みたいに。MCとは呼ばれなかった時代だけど、ずっとMCの始まりではないかっていう思いが交錯するんですよね。スクランブル交差点のように。

古き司会進行のピンでやるっていう世界から、横並びになって座りになって、台本も見て進行もやる。だけれども関係ない方へ司会から外れる、進行からも当然外れることもやるっていうが放送された。放送作家の先生が、どんどん司会をやる時代になった。

フジテレビ「夜ヒット(夜のヒットスタジオ)」であれば、前田武彦さんが(芳村真理さんと)ツーショットでね。進行には入ってこないけど、ぴったりと合っている。巨泉さんのTBS「クイズダービー」も含めて、とっても面白い。

いい司会があって、MCとはまだ言われないけど、まぁMCだなぁと思うよ。それから、また時代が流れて、平成後期から大ざっぱに言うと、今に至るまでぐっちゃぐちゃになっている。基本的に司会だろうが、進行だろうが、大して面白くもないけど僕なんかが見ちゃうと、分断しているのが分かる。分担作業、分業制になってんだっての。(続く)

◆古舘伊知郎(ふるたち・いちろう)1954年(昭29)12月7日、東京都生まれ。立大卒業後の77年にテレビ朝日入社。同8月からプロレス中継を担当。84年6月退社、フリーとなり「古舘プロジェクト」設立。85~90年フジテレビ系「夜のヒットスタジオDELUXE、SUPER」司会。09~94年フジテレビ系「F1グランプリ実況中継」。94~96年NHK「紅白歌合戦」司会。94~05年日本テレビ系「おしゃれカンケイ」司会。04~16年「報道ステーション」キャスター。現在、NHK「日本人のおなまえ」(木曜午後7時57分)司会など。YouTube「古舘Ch」。14日の徳用・渋谷区文化総合センター大和田古さくらホールから初の全国ツアー「古舘伊知郎トーキングブルース2021」がスタート。血液型AB。