役所広司(65)が21日、東京・府中の森芸術劇場どりーむホールで行われた、第13回TAMA映画賞で最優秀男優賞を受賞した。

役所は壇上で、パンフレットに今後、撮りたい役柄、ジャンルについて「爺さんのロードムービー」とつづったことについて聞かれ、若い頃に火野正平(72)と、年齢を重ねてから撮りたいと語り合った題材だと明かした。

役所は「すばらしき世界」(西川美和監督)「バイプレーヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~」(松居大悟監督)「竜とそばかすの姫」(細田守監督)の演技が評価されての受賞となった。各作品への感謝の言葉などを口にした後、司会から「爺さんのロードムービー」とパンフレットに書いたことについて聞かれると、笑みを浮かべて語り始めた。

「もう、せっかく、じいさんになってきましたんで…。昔、まだ若い頃、火野正平さんと2人でお酒を飲みながら『70くらいになったらロードムービーで、耳の聞こえないおじいさんと目の見えないおじいさんが2人で小さなアパートに暮らすところに、何か怪しい大金が転がりこんで、日本中を旅をする映画をやろうよ』って言ってたんですけど」

役所の脳裏には、ロードムービーとして米国のデヴィッド・リンチ監督の99年「ストレイト・ストーリー」が深く刻み込まれているという。「ああいうのって、年を取っていないと出来ないし、年を取って、こういう仕事が出来るのは、うらやましいなと、ずっと思っていたので、いつかそういうのをやりたいと思っています」と語った。

火野は現在、NHK BSプレミアムで放送中の「にっぽん縦断こころ旅」で、視聴者が手紙で寄せた心に残る風景を目指し、自転車で日本全国を走る旅をしている。番組を始めて10年で1019日旅をして、1万6551キロを走破してきたという。11年目の秋となった9月には長野県を出発し、12月までに沖縄を目指す旅を展開中だ。そんな火野と役所が「爺さんのロードムービー」を作る日は訪れるのか…そんな日が来ることを望むように、役所は壇上で笑みを浮かべた。