内館牧子氏原作の「終わった人」(講談社文庫)が2023年夏、俳優中井貴一(61)とキムラ緑子(61)によってリーディングドラマとして舞台化されることが決まった。台本・演出は、笹部博司氏が手がける。

定年を迎えた田代壮介のジェットコースター人生が描かれる。すべてを見通している娘道子、かっこいいバーのマダム美砂子、そして妻の千草ら、クセのある登場人物が物語の見どころを生み出す。壮介を中井が、女性陣すべてをキムラが演じる。

中井は「私の同級生達も、年齢的に『終わった人』の門口にさしかかっています(笑)それに反し、俳優という仕事は幸か不幸か「終わった人」になるかならないかは自己判断。故に、ここからが、大きな人生へのチャレンジになる様な気もしています。そのチャレンジの初めとして、リタイアというアメリカ的な発想が苦手な同胞達に、共感と可笑しみを与えられる様、朗読させて頂きます」とコメント。

キムラは「台本読んで、泣けてきました。どの人も正直で、本音と本音がぶつかってる。それが生で面白いんです。リーディングってあまり生っぽくならない方がいいのかな、と勝手に思っていましたけど、この台本はそうではない気もしています。愛情があるから、ぶつかりあい、なんとかしたいと思う。誰にでも何かしらを思い浮かべて共感できるのではないかしら。この面白い(切ない?)脚本をそのまま、お伝えするために後は稽古でジタバタするのみです(笑)。いろんなことを想像していただくために、届く言葉でしゃべりたいと思っています」とした。

原作者の内館氏は「小説『終わった人』を書いた時、どれほど多くの読者から言われたかわからない。『あの主人公は、自分がモデルだろう』 友人知人はもとより、全国津々浦々の会ったこともない方々からも言われたのだから驚いた。モデルはまったくいない。私が創り上げた主人公である。ただ、これほど多くの方々が自分に重ねたということは、定年後の男たちの心理、情況がいかに現役時代と違うかを物語っている。どんな職種であれ、第一線で働いてきた男たちが、定年と同時に『終わった人』になる。すでに下の世代が会社を、組織を動かしている。まだまだ能力も技術もあるのに『お引き取り下さい』になるのだ。かけられる言葉も『お元気そう』とか『若々しい』とか『お変わりないなァ』とかジイサン仕様になる。こんな『終わった人』の悲哀とあがきを中井貴一さんが、そしてそんな夫と関係なく自分の人生を組み立てていく妻をキムラ緑子さんが演じる。原作者としてワクワクする。楽しみでたまらない。そして全国津々浦々の『終わった人』たちは観て、『やっぱりモデルは自分だ』と思うだろう。大成功というものである」とコメントした。