2日に肺炎のため90歳で亡くなった、吉行和子さんが今年2月に撮影に参加した映画「あなたの息子ひき出します!」(26年公開)の深川栄洋監督(49)が、訃報発表から一夜明けた10日、日刊スポーツの取材に応じた。吉行さんが最後に演技をした作品であり、演じた役名が名前と同じ「和子」だったことを明かした。

「あなたの息子ひき出します!」は、内閣府の調べで15~64歳の146万人がひきこもり状態にあり、うち4分の1が10年以上、ひきこもり生活を送っている状況を踏まえ、ひきこもりの人たちに手を差し伸べようとする主人公の奮闘を通して、社会の矛盾と闇に光を当てる社会派エンターテインメント作品。深川監督が自己資金を投じて製作し、脚本も手がけた。吉行さんが演じた三浦和子は、ひきこもりの息子を持つ母親で、作品の起点となる重要な役どころだ。

3月にテレビ東京系で放送された開局60周年ドラマ「晴れたらいいね」を手がけた深川監督は、昨年9月の撮影時に出演した吉行さんと久々に再会。芝居を見て、改めて「すごい」と感じ「映画を考えていて…半年後なんですが」と「あなたの息子-」の企画を打ち明けた。吉行さんは「私、大丈夫かしら? 励みに頑張ります」と言い、同年末のオファーを受けたという。同監督は「役名は年齢に合うお名前をつけさせていただいた。3ページあったせりふも完璧で、他の人のせりふまで覚えていた。全身、役者です」と感服した。

9月末に仕上げを終え、10月に完成予定。完成を報告する間際の訃報だった。深川監督は「芝居がお客さまの心の中で永遠に生き続けるような映画にしていきたい」と誓った。【村上幸将】