今年5月の「第23回中之島映画祭」でグランプリを受賞した上坂龍之介監督(30)のデビュー作「レンタル家族」の勢いがすごい。12月6日から新宿K's cinemaで1週間限定で公開されると、4日目まで即完売のロケットスタート。多くの配給会社から上映の声もかかる中、「1週間全ての回が満席にならなかったら次の作品に切り替えます」と覚悟を決めて届ける一作だが、12月8日時点で、その達成可能性は高くなっている。
映画は、自身の親族などになりきってもらう「レンタル家族」というサービスを軸に、“演じること”と“リアル”のはざまで揺れ動く人々の感情、つながりや絆にスポットを当てた物語。実社会でも起きがちな問題をとらえた構成や演出はさることながら、主演の荻野友里(43)ら各演者の芝居にも引き込まれるものがあった。各映画祭にも出品し、「ハンブルク日本映画祭」や「第17回日本映像グランプリ」「沖縄NICE映画祭」にもノミネートされた。
スポーツ紙は初という取材に応じた上坂監督は「これまでの人間関係の否定とこれからの人間関係の肯定。親子や恋人の関係などでも、立場や倫理観が邪魔をして、本当は仲良くなれる存在の人がそういう関係でいられないというのが、まだ日本では多いのかなと感じています。『レンタル』というパッケージの中で、そうした人間関係のつながりを描きたいなと思って作りました」と思いを語っていた。
今回1週間の限定上映する新宿K's cinemaは、17年の映画「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督が手がけ)が最初に公開された劇場でもある。同作も6日間限定上映中に口コミが広がり、全国上映、そして空前メガヒットへとつながっていった。上坂監督もそうしたブームの再来となることを願っているという。公開の約1カ月前からはほぼ毎日スタッフや演者らと劇場に足を運んでチラシ配りも敢行。取材した日も、ひとしきり話を終えると立ち上がり、劇場内にいる映画ファンたちにチラシを配っていた。
その日は作中で主人公の“レンタル娘”役を見事に演じていた中本梨那(11)も同行しており、上坂監督について聞くと「優しくて話しやすかったので、どう演じたらいいのかとかも聞きやすかったですし、リラックスして演じられました」と撮影を振り返った。
シーンごとに自分の演じたいイメージを上坂監督に伝え、すり合わせながら本番に臨んでいたといい「レンタルということの意味を考えて行動に移したり、いろんなことを監督さんと話してやっていました」。目標は「川口春奈さんみたいな何でもできる女優さんになりたい」とも掲げ「バラエティー番組出演やアイドル活動にも興味があります。作品の主演ができる女優さんになれるよう頑張っていきたいです」と力を込めた。
早くも話題必至となりそうな「レンタル家族」。7日間完売を達成した際には来年の追加上映も検討しているといい、“カメトメ旋風”の時のようにより多くのファンの目に触れることになりそうだ。上坂監督は「本当に『レンタル家族』は人とのご縁や運が良かった。それがなかったら、作品自体もできていなかったと思います」と感謝を口にし「みなさんにもっといいギャラを払って映画が作れるように、僕も頑張って早く売れないとなと思っています」と力を込めた。【松尾幸之介】
◆「レンタル家族」あらすじ 東京の会社に勤務する洋子は仕事で多忙な毎日を過ごす傍ら、定期的に実家へ帰省をし、父忠勝とともに認知症の母千恵子のケアをしている。千恵子の症状は近頃進行が早く、洋子が数年前に離婚したことさえ忘れ、帰省の度に元夫と娘について聞くのであった。ある日、洋子は取引先の担当者から「レンタル家族」というサービスを紹介され、体験レンタルを強く勧められる。戸惑いつつもレンタル夫を家事代行として自宅に呼び、派遣された松下豪と馬が合った洋子は、千恵子のことを相談。すると松下は、自分を夫、知り合いの子役・安田朱里を娘として、家族を演じることを提案し…。
◆上坂龍之介(こうさか・りゅうのすけ)1995年(平7)1月30日生まれ、兵庫県加西市出身。小学生の時に見たエドワード・ズウィック監督の映画「ラスト サムライ」の影響で映画の道を志す。映画学科のある大学に通いながら音楽番組のアルバイトとして働き、卒業後に制作会社で1年間勤務。格闘技番組のADなどを務めた。18年に自身の制作会社を設立して映像の仕事を行いながら映画監督を目指す。



