中国へ返還される東京・上野動物園の双子のジャイアントパンダ、シャオシャオとレイレイの一般公開が、1月25日をもって終了した。上野動物園には事前抽選で当選した4400人の観覧客が2頭の最後の姿を見守り、観覧エリアの外には500人以上の落選したファンが訪れた。記者は最後の観覧日に直接取材する機会に恵まれた。
パンダを生で見るのは、おそらく人生初。観覧エリアに入ると、黙々とササを食べ続け、食べ終わると観覧客に背を向けてうつぶせで眠る、のんびりとしたレイレイ。木に登ったり歩き回ったり、活発に動き回るシャオシャオの姿があった。記者が生まれてから24年間、日本ではずっとパンダが飼育されていた。それもあって、日本にはパンダがいる、という前提があったことで特別感や珍しさをほとんど感じず、進んで見に行こうとも思わなかった。それでも、実際に見ると珍しいものを見られたという感覚があり、少し幸せだった。
パンダを観覧した子どもたちは「かわいかった」「楽しかった」と笑顔で話し、熊本県から来園したという姉妹は「レイレイが寝ちゃって、お尻を向けて顔は見られなかった」と、最後の2頭の姿を温かく見守った。長年上野でパンダを見てきたという女性は涙ながらに「すごく寂しい。『元気でね』と伝えてきました」と別れを惜しんでいた。
園内が盛り上がりを見せる一方、ネット上では「パンダの何がいいのか」「日本にパンダはいらない」など、冷ややかな声も多く見られた。実際、記者もこの日までパンダを見たことはなかったし、強い思い入れがあるわけでもない。それでも、取材を通じて、パンダの存在が心のよりどころだったという方とたくさん出会い、アイドルと同じように“推し活”の対象にもなっていることを知った。
印象的だったのは、観覧できないのにもかかわらず、パンダの観覧エリア周辺に詰めかけたファンの多さだ。開園直後からベンチにぬいぐるみを並べて立ち話をする女性5人組は「23日は見られたけど、今日は当たらなかった。何年も前から週末に見に来ていて、最後の日だし、同じ空気を吸いたかった」と、観覧エリアの外で最後の日を過ごしていた。出口付近に立っていた60代の男性は「孫に写真を見せてあげたい」と、当選した男性客にインスタントカメラを託し、出てくるのを待っていた。
観覧が終わる午後4時ごろには、そうしたパンダ愛好家が500人以上集結した。他の動物と並ぶことなく特別な観覧エリアを設けられ、別れの際にはこうして多くの人が集まるというのは、パンダが日本人にとって特別な存在だったことを示している。だが、約54年前に初来日して以降日本にいるのが当たり前になっていたその特別な存在が、日本からいなくなる。少しずつ、日本の文化や日中関係において重要な瞬間を目撃していることを実感していった。
取材に応じてくださった方々に100%共感できた自信はないが、思いを実際に聞いたことで、日本でパンダが広く愛され、文化的に大きな影響を持っていたことを肌で感じられた。最後の最後に、パンダの存在の大きさを肌で感じられて、貴重な1日だった。【野見山拓樹】
-【写真特集】シャオシャオ&レイレイありがとう!最後の観覧日も元気な姿でファンとお別れ--https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202601250000781.html--



