安田記念は牝馬が主役を張る。ダービーで2分21秒9のレースレコードが出たように、先週からCコースに替わった東京は高速決着必至だ。水島晴之「G1の鍵 その一瞬」は、ヴィクトリアM5着ソングライン(牝4、林)に注目した。底力では牡馬に分があるがスピード、切れなら互角以上。位置取りの差で負けた前走から巻き返しがある。

ヴィクトリアMで5着となったソングライン(左から2頭目)、右は勝ったソダシ
ヴィクトリアMで5着となったソングライン(左から2頭目)、右は勝ったソダシ

■ゴール前加速抜群ソングライン重量差生かす

ヴィクトリアMのソングラインは、内枠があだになった。スタートしてすぐ外の馬に寄られて馬群がごちゃつく形に。池添騎手は危険を回避するためポジションを下げたが、結果的に前残りの競馬で脚を余した。レース後「うまく乗れずに申し訳ない」と話したが、スムーズさを欠きながら勝ち馬ソダシと0秒3差、2着ファインルージュとは首+鼻+鼻差の接戦で、改めて能力の高さを示した。

負けて強しの内容はレースラップにも表れている。前半3ハロン34秒7、上がりは34秒2。逃げた18番人気ローザノワールが4着に粘り、2番手のレシステンシアが3着という先行有利の展開で、4角8番手では厳しかった。しかも3角ではつまずく不利。リズムを崩しながら、上がり33秒2の脚を繰り出したのは評価していい。全体では5番目の上がりだが、ゴール前の加速は際立っていた。

3歳時のNHKマイルCでは、1分31秒6の好時計でシュネルマイスターの鼻差2着。グレナディアガーズ、ホウオウアマゾンに先着した。昨秋の富士Sでも古馬相手に決め手比べを制している。高速決着の適性はすでに証明済み。牡馬一線級との力差もない。負担重量の2キロ差も大きなアドバンテージだ。

前走もいい感じの仕上がりで臨んだが、サウジ帰りで調整は難しかった。今回は中2週の強行軍だが、さらなる上積みは見込める。林師が疲れがないことを確認してのゴーサイン。1週前追い切り後も「本当にいい動きでした」と手応えを感じている。高速馬場のCコースを味方にすれば、悲願のG1制覇が近づく。

■軽い芝なら速力生きる

【ここが鍵】

東京芝は先週からCコースを使用。Aコースから6メートル外へ内柵を設置することで、荒れた箇所が隠れて時計の出やすい馬場になっている。日曜日はダービー以外にも、目黒記念(2500メートル)が2分32秒1、3勝クラスのむらさき賞(1800メートル)が1分45秒4、3歳未勝利(1600メートル)でも1分33秒7の速い時計が出た。東京1600メートルの底力勝負ではパワーに勝る牡馬が有利だが、高速決着の軽い芝なら牝馬のスピード、切れが生きる。もともと安田記念は牝馬の活躍が目立っており、ここ4年はアエロリット(18、19年)、アーモンドアイ(20年)、グランアレグリア(20、21年)が連続で連対中。また古くはノースフライト、ウオッカも勝っており、G1級牝馬なら十分勝負になる。

■ファインルージュ力出せる条件

<ヴィクトリアM>

ヴィクトリアM2着のファインルージュは、直線でつまずいたのが痛い。内から外へ出てきた馬に触れバランスを崩したが、そこから立て直しての連対は立派だ。まともなら頭まであったかもしれない。東京マイルは東京新聞杯に続いて連続2着。一番力の出せる条件で、ここも上位争いできる。

■レシステンシア内をぴったり

<ヴィクトリアM>

ヴィクトリアM3着のレシステンシアは、決め手の差で上位2頭に差されたが、当時はBコースで内が荒れていた。直線は馬場のいい外めに出したが、本来は内ぴったりを回りたいタイプ。Cコースに替われば、それができる。マイルは少し長いが、先週のような高速決着なら粘り込みがあっていい。

■ロータスランド積極策取れる

<高松宮記念>

高松宮記念2着のロータスランドは、流れの速い1200メートルを使ったことがCコースで生きる可能性がある。前走は中団から差して連対したが、マイルなら2番手から抜け出した関屋記念、京都牝馬Sのように積極策が取れる。前残りの高速馬場でスピードが生きれば、牡馬相手でも引けは取らない。