今年最後のコラム。月2回(第2・4土曜)ということもあり、これまで23人の俳優を紹介。紹介してから更に活躍する人も多く、映画監督ならではのさすがの目利きといったところでしょうか(笑い)。
そこで今回、ドラマのまとめもしつつ24人目の方を紹介していきます。まず、完走作品としては「オールドルーキー」「アトムの童」「真犯人フラグ」「石子と羽男」「エルピス」「ナンバMG5」の6本。視聴率だけでいくと「オールドルーキー」がかろうじて10%を超えたぐらいでその他は話題になりつつも数字だけを見ると多少寂しい結果に。しかしながら、いずれも自信をもっておすすめする良作なので配信などで年末年始に是非見ていただきたい。
そこからさらにおすすめを挙げるとすると現在放送中のフジテレビ系ドラマ「エルピス」。本コラムでもすでに長澤まさみ、鈴木亮平の2人の回で取り上げさせてもらい、さらには昨年取り上げた眞栄田郷敦も熱演中。スタッフ勢では、脚本に渡辺あや、演出に大根仁、さらには音楽に大友良英と豪華メンバー。プロデューサーの佐野亜裕美が転職(TBSからカンテレ)してまで作りたかった渾身(こんしん)の作品。
内容は冤罪(えんざい)事件を中心に、政治やマスコミにも切り込む鋭い内容で、今年一番の問題作といってもいいだろう。比較的早い段階で大筋が見えるが、そこからさらに深堀りする脚本と演出に脱帽。ここからのラストスパートに大いに期待したい。
そこで今回紹介したいのは「エルピス」にてテレビ局のプロデューサー・村井を演じる岡部たかし。劇団東京乾電池出身で現在50歳、映画にドラマに舞台とさまざまな作品に出ており、顔を見たら大抵の人がピンと来るであろう。ちなみに個人的に意識しはじめたのは、カー用品店ジェームズの連続10秒ドラマCM「愛の停止線」、短いながらも良くできた脚本にどこか哀愁を感じる風体がなんとも言えず、一目でいい俳優さんだと思った。
今回のドラマの中では、長澤や眞栄田の上司ながら最初はどこか軽薄な印象だったが、真相を突き止めようとする2人に感化され、今となっては最大の理解者になりつつある。アラフィフ世代にわかりやすく例えると名作ドラマ「振り返れば奴がいる」の西村まさ彦といったところだろうか。織田裕二、石黒賢がメインを張る中、回を重ねるごとに存在感が増し、ラストでは最重要人物になった。
今回も途中退場する場面はいくつもあったが、彼の演技がどこかそうさせないのであろう。また、脚本家や演出家と同年代の設定なこともあり、物語のひとつの軸になりつつあるのも確か。遅咲きといっては失礼かもしれないが、このドラマ全体を覆うある種の迫力が、岡部演じる村井に宿っているのではないかとさえ感じる。物語同様、今後が楽しみな俳優さんの1人です。
◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営している。最新作「追想ジャーニー」が11月11日から池袋シネマ・ロサ他にて公開。
(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)





