出演者のピエール瀧(56)が麻薬取締法違反で有罪となった19年の映画「宮本から君へ」(真利子哲也監督)をめぐり、製作会社のスターサンズが文化庁所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会」(芸文振)を相手に、助成金交付内定後に下された不交付決定の行政処分の取り消しを求めた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(尾島明裁判長)は17日、不交付決定処分の取り消しを命じる判決を言い渡した。日本映画史上、映画で国を訴えた初の裁判となったが、22年3月に処分を違法とした1審判決を取り消し「適法」と判断し、不交付を妥当とした2審の東京高裁を破棄し、スターサンズの逆転勝訴が確定した。
映画は19年3月12日に本編が完成も、同日に瀧がコカインを使用したとして、麻薬取締法違反容疑で逮捕。製作側には、同29日に芸文振から助成金(1000万円)交付内定の通知が送られたが、同4月24日の試写後、芸文振関係者から瀧の出演シーンの編集ないし再撮の予定を問われ、製作側はその意思がないと返答した。同6月18日に瀧に懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡されると、制作側には同28日に芸文振から不交付決定が口答で伝えられ、同7月10日付で「公益性の観点から適当ではないため」との理由で不交付決定通知書が送られた。
今回の件の1つのポイントとして、芸文振が同9月に助成金の要項を改訂し、公益性の観点から内定の取り消しが出来るとした上、助成金の募集案内にもスタッフ、キャストが重大な刑事処分を受けた場合は不交付、不交付の可能性があるとの一文が記載されたことだった。弁護団の四宮隆史弁護士は21年10月26日に東京高裁で開かれた控訴審後の会見で「後出しじゃんけんのようなもの」と批判した上で芸文振側が「交付内定は内部的な手続きに過ぎない」と主張していると説明。「交付要項に基づく内定は無視して良く、最終的に理事長判断で決めるというもの。自己否定に当たるのではないか。驚いた」と首を傾げていた。20年2月25日に東京地裁で開かれた1審から闘い続けた裁判の原告で、22年6月11日に心不全のため志半ばで急逝した、プロデューサーの河村光庸(かわむら・みつのぶ)さんも、その点に関しても疑問を呈していた。
河村さんに代わり、8月1日付けでスターサンズの社長に就任した四宮隆史弁護士は「要項を変えるという判決ではないが、言及している。要項が今のまま残ったとしても、文化芸術助成において重視されるのは文化振興。薬物乱用という公益で取り消されることは、ないはず」と今回の最高裁判決の意義を強調した。その上で「ぜひ、要項の見直しをして頂きたい。曖昧な判断で(助成が)取り消される可能性がある。ぜひ、変えて頂きたい」と、募集案内に追加記載された、キャストが重大な刑事処分を受けた場合は不交付、不交付の可能性があるとの一文の見直しを強く求めた。



