【ハッシュタグと野球#1】「#プロ野球申し送り事項」 鴎党45歳の何気ないツイートが爆発的拡散

プロ野球も“新しい生活様式”が浸透してきました。SNSで使われる「#(ハッシュタグ)」。#の後にキーワードを入力することで、その話題についての投稿を瞬時に検索できます。もちろん、プロ野球界にも無数のタグが存在。ファン同士の交流の場となっています。お父さん、一緒に勉強しましょう。5回連載。(2022年6月16日掲載。所属、年齢などは当時。文中敬称略)

野球の国から

湯本勝大

★「やまだしょてん」から西武ファンへ

SNS上で新たな文化が定着した。「#プロ野球申し送り事項」。

ファンが、対戦したチームの印象や注意点などを次対戦カードの球団のファンへ教えるというものだ。

軽い気持ちが発端だった。20年6月21日。

ソフトバンクとの3連戦を終え、「やまだしょてん」というハンドルネームで活動する現在45歳の1人のロッテファンが、思いの丈をツイートした。

「東浜の投球はストレートも変化球もギンギン」「無観客なので松田がいつもよりうるさい」

本塁打を放ち、無観客の中「熱男!」と叫ぶ松田宣浩=2020年3月5日

本塁打を放ち、無観客の中「熱男!」と叫ぶ松田宣浩=2020年3月5日

ソフトバンクが次に対戦する西武ファンへ、メッセージを送った。これが初めての「#プロ野球申し送り事項」だった。

当時はコロナ禍のはじまり。感染対策のため同一カード6連戦が組まれていた。無観客試合も続き、ファンがプロ野球を見る機会も減っていた。

やまだしょてんは「相手のことがなにも分からない状態で始まった。本当に特に考えずに、軽くツイートした」。

普段は書店員として働く。業務の引き継ぎなどで使う申し送りの形式で発信。瞬く間に広まっていった。

★「マクガフが出たら諦めましょう」

今季も申し送りであふれている。

「マクガフが出たら諦めましょう」

「ドラゴンズはきつねダンスを無視したらきつねのたたりで金縛りにあい、点が取れなくなりました」「周東のところへ打ってはいけません。ボールに磁石仕込んでます」

次に対戦するチームのファンへ共有している。

爆発的な拡散力も、この時代ならでは。「全く想定していなかった。今の時代特有の広まり方だと思う。Twitterがなかったらこんなこと絶対ない」と困惑ぎみに笑った。

中日戦できつねダンスを踊るファイターズガール。多様化する野球の楽しみ方の象徴となった=2022年6月

中日戦できつねダンスを踊るファイターズガール。多様化する野球の楽しみ方の象徴となった=2022年6月

ひと昔前でも、同じ球団が好きなファン同士で語り合うことはあった。今は個人が端末1つで全世界へ向けて発信できる時代。

ファンが簡単につながれる。選手を褒め合う。あまり知らなかった選手を知るきっかけにもなる。

「これがすごかったよというのを見ると、対象チームのファンとしては『そうでしょう!』となる」と笑う。平和でほっこりするタグとなった。

★独り歩きして成長

申し送り事項の内容も少しずつ変わってきた。野球だけではなく球場グルメや街紹介にも使われる。

「基本的にTwitterに出したら独り歩きするもの。みんなそれぞれ解釈が違ってくる」と、ハッシュタグの成長を優しげに見守っている。

気軽に思ったことを発信できる。「ハッシュタグは短い言葉の方が刺さるみたい。1つの単語でまとまっていると『自分でもこのネタ出せるぞ』と」。

ファンの数だけ見方がある。各球団ごとに数え切れないほどのハッシュタグが存在している。形式なんてなんでもいい。それを新たに生み出してみるのも、乗っかってみるのも、新たなプロ野球の楽しみだ。