「自分でも何であんなに遅かったのか分からない。最後の100メートルは、もはやジョギングぐらいの遅さの感じだった」

男子200メートル予選後。走り終えたサニブラウン・ハキーム(22=タンブルウィードTC)は取材エリアで声を落とした。21秒41の2組6着。最下位で敗退。「予選で落ちるのは初めて。ちょっと何とも言えない」。受け入れることが難しい、その結果に自分でも混乱しているようだった。

約2年ぶりの200メートルのレース。サニブラウンは最初の50メートルはイメージ通りに前へと出られた。いつもならギアが入る中盤から全く伸びない。「全然切り替えられなかった」。他の選手の背中はどんどん遠のいた。「気持ちが切れてしまった部分もあるかもしれないが、もっと行けたのではないかという思いもある」。ぼうぜん自失という表情で、なんとか言葉をつむいだ。400メートルリレー代表入りも絶望的となった。

100メートルは9秒97、200メートルは20秒08と、ともに日本歴代2位のタイムを持つ。17年、19年と日本選手権では2冠を達成し、圧倒的な強さを誇ってきた。

その本来の実力は全く発揮できなかった。「調子が悪かったわけでもない」。体については「痛いところも全然ない」。明確な原因が見えない分、ショックを隠せなかった。

今季はずっと波に乗れなかった。5月31日の競技会の男子100メートルに、19年世界選手権以来1年7カ月ぶりのレースに出場したが、結果は追い風3・6メートルの参考記録ながら、10秒25。6月の日本選手権は100メートル6位で、200メートルは棄権。最も力を入れていた100メートルで代表を逃したが、19年に五輪参加標準記録を突破していた200メートルの代表に選ばれていた。

ずっと「世界一」を目標にしてきた。高校まで過ごした東京の地でのオリンピック。それは思い描いた結果には、ほど遠かった。この屈辱は忘れられない。まだ22歳だ。糧とするしかない。【上田悠太】