スーパーサブが、日本を頂点に導く。史上初の決勝進出を決めたバスケットボール女子の日本は、8日に金メダルをかけ、米国と対戦する。昨年11月に前十字靱帯(じんたい)を損傷しながら、代表の座を勝ち取った本橋菜子(27=東京羽田)は、時間こそ短いが、全試合に出場し、大事な場面でチームを支えてきた。決勝でもここ一番の勝負強さで「絶対に必要」と選んでくれたホーバス監督に恩返しする。

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本橋は今大会1試合平均7・3分の出場で5得点。短時間ながら出場時間あたりの得点はチームトップだ。1次リーグのナイジェリア戦、準々決勝ベルギー戦では、ともに約10分の出場で10得点。「大事な場面で本橋を使う」というホーバス監督の期待に応えた。

18年に代表初選出。19年にレギュラーを勝ち取り、アジア杯では日本の4連覇に貢献してMVPを獲得。目標だった五輪出場が見えていたが、延期となり、本番8カ月前に不運に見舞われた。前十字靱帯(じんたい)の損傷。「諦めていない。最後まで戦う」。復帰は絶望的だったが、代表のもとでリハビリを行い、トレーナーが止めるまで練習を続けた。今年6月の代表戦で復帰。7月、PGを最後まで悩んでいたホーバス監督から選出を聞いた時はその場で泣き崩れたという。

トップアスリートの勇姿が本橋の心を支えている。14年ソチ五輪フィギュアスケート6位の浅田真央さんの演技に心打たれた。「逆境の中で、気持ちの切り替えとか、終わった後の達成感を見て、自分も頑張ろうと思った」。19年のラグビーW杯にはまり「命懸けでやっている。一体感がすごい」と刺激を受けた。日の丸を背負う重みを感じ「目標を持ってもらえる選手になろう」と自分の価値を高めていくようになった。

昨春コロナ禍で埼玉の実家に帰省中、近くの公園で地元の小学生と交代でシュート練習をした。顔見知りになり、最後に「本橋選手のようになりたい」と書かれた手紙をもらった。「子どもたちもその時にできることをやっていた。一緒に頑張れた」と励まされた。

ケガで出場がかなわなかった渡嘉敷の思いも背負う。「一緒にリハビリをやってきて、頑張っていたので、相当悔しいんだろうなと」と思いやった。「みんなで乗り越えられたというのを体感できる大会にしたい」。165センチの小さな司令塔が大きなメダルを手にし、苦悩の日々を喜びに変える。【松熊洋介】