23日に開幕した東京オリンピック(五輪)の連日の猛暑に、アスリートのみならずメディアからも「暑すぎる」と不満の声が上がっているが、コラムニストのダン・ヴェッツェル氏が「日本の組織委員会は天候についてうそをついていた。そして今、アスリートが代償を払っている」と題するコラムをYahoo!Sportsに掲載した。

26日朝に行われた男子トライアスロンのゴールシーンは「まるで戦場のように見えた」と暑さで倒れこむ選手やトレーナーに介助される選手たちの様子を表現。

開始時間を早朝に設定したにも関わらず、スタート時の気温は30度近くまで上がり、湿度も67・1%あったと灼熱(しゃくねつ)東京の現状を紹介した。その上で、2013年に東京が開催地に名乗りを上げた際に「この時期の天候は晴れる日が多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」と主張していたことを指摘。「穏やか?理想的?」と疑問を呈し、「非常に厳しい。東京に来る前にある程度は話を聞いて覚悟はしていたが、現状は想像以上だった」とのテニス男子シングル世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)のコメントを紹介。多くのアスリートがこの過酷な状況下で競技に出場しているが、不満を抱いたジョコビッチら世界ランキング上位の一部選手から暑さを避けるため試合の開始時間を夜に変更するよう提案が出されたことにも触れている。

2013年、招致委員会は立候補ファイルで「この時期の天候は晴れる日が多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」と記していた。

コラムではこの点に言及。「日本は、それがうそであることを知っていました。彼らはここに住んでいます。東京で暮らしながら、真夏を『穏やか』『理想的』と表現する人はひとりもいません」と批判した。さらに東京では温暖化の影響で平均気温が上昇、毎年夏には熱中症で多くの死者が出ていることも紹介。「良い知らせとしては、気候はまだそこまで悪くなっていない」としつつも、64年の前回大会が、涼しい10月に開催されたことは「理にかなっていた」とした。

過去に自身が訪れた真夏のマニラやバンコク、ジャカルタなどよりも東京は暑いとし、ここよりも暑いところは(世界最高気温を記録した)米カリフォルニア州のデスバレーとエチオピアやケニアなどアフリカ大陸東部しかないと皮肉った。

一方、気温が高いこの時期に五輪を開催しているのは、放映権を持つ米NBCテレビが北米でアメリカンフットボールやバスケットのシーズンが始まっていないためだとし、高視聴率が期待できるこの時期に開催を設定していることにも疑問を投げかけた。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)