初出場の濱田尚里(しょうり、30=自衛隊)がライバルのマロンガ(フランス)を69秒殺し、金メダルを獲得した。

先に宿敵に足技を仕掛けられ、一緒に青畳に倒れると、そのまま得意の寝技に入った。腕をつかみ、関節技を意識させながら、崩れ上四方固めに入って1分9秒、一本勝ちを収めた。

2年前、同じ日本武道館で開催された19年世界選手権決勝で敗れていたマロンガを下し「いつも負けていた相手だったので、今回は絶対に負けない気持ちでした。やられないように対策し、得意の寝技を出せて良かった。絶対に金メダルを取りたいと思ってやってきた」と両目から大粒の涙を流した。

初戦となった2回戦から準決勝のワーグナー(ドイツ)戦までも寝技による一本勝ち(合わせ技を含む)で勝ち上がり、全4試合オール一本で締めくくった。浜田は「寝技を狙っていた。寝技で勝ち上がれて良かった」と感慨に浸った。

中学時代は無名だったが、鹿児島南高時代に関節技に目覚め、寝技を習得して才能が開花した。山梨学院大4年時には柔道の幅を広げるためにロシア発祥の格闘技サンボに挑戦。総合格闘技の元PRIDEヘビー級王者エメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)もバックボーンとしている柔道とレスリングをミックスさせた競技だ。このサンボでも14年世界選手権で優勝を飾るほどの実力を身に付けた。

18年に柔道の世界選手権を制して、東京五輪を本格的に目指すようになった。近年は、警戒される寝技をいかすために背負い投げなどの立ち技を猛特訓。担ぎ技、足技から寝技に移行するという得意パターンが進化した「寝技の女王」が、初の夢舞台で頂点に立った。

◆濱田尚里(はまだ・しょうり)1990年(平2)9月25日、鹿児島・霧島市生まれ。10歳で国分西柔道スポーツ少年団で競技を始める。鹿児島南高-山梨学院大-自衛隊。高1で関節技に目覚め、練習の7割は寝技のけいこを積み、3年時に総体2位。山梨学院大時代に柔道の一環でロシアの格闘技サンボを学ぶ。自衛隊入り後の13年にユニバーシアード、14年に世界選手権優勝。世界選手権は初出場した18年優勝、19年2位。右組み。得意技は寝技、内股。世界ランク2位。好きな食べ物はトマト。趣味は旅行。好きなタレントはゆりやんレトリィバァ。168センチ。