「育成型クラブ」を掲げるJ1のサガン鳥栖は、2月に鳥栖U-18所属のFW兒玉澪王斗(れおと、17)のトップチームとの2種登録を発表した。近年急激に強くなっているユースから、また有望株が加わった。

今季所属の下部組織出身者は、高3でクラブ史上初のトップ昇格を果たしU-22日本代表にも選出されたMF松岡大起(18)をはじめ、今季新加入のGK板橋洋青(18)、MF本田風智(18)、DF大畑歩夢(18)に続く7人目となった。

2月22日のJ1開幕戦は、MF松岡、本田が先発した。0-0に終わったが、優勝候補の川崎F相手に堂々と渡り合った。過去には、活躍が認められ東京に移籍したFW田川亨介(21)も所属。今季は、チーム最高年俸だった元日本代表FW金崎夢生(31)ら各ポジションの主力が多数他クラブに移籍した。兒玉には、新旧交代の波も追い風に、ぜひチャンスをつかみ取ってもらいたい。

鳥栖は18年度決算で、18年夏に補強した推定年俸8億円のFWフェルナンドトーレス(36)や同1億5000万円の金崎らの高額人件費や、成績不振で18年途中に解任したマッシモ・フィッカデンティ監督(52=現名古屋監督)の違約金がかさむなどして、4期ぶりとなる5億8100万円の赤字に転落した。

竹原稔社長(59)は赤字決算の責任を問われ「投資が大きかったと実感している。そこは反省しながらチームによりフィットする人材をつくっていくことに力を注がないといけない」と猛省。財源が乏しい地方クラブながら、背伸びし過ぎた運営を見つめ直し、身の丈経営に転じてきた。

だが、そこに追い打ちをかけるような今回の新型コロナウイルス禍である。いまだ開幕日が見通せず、主力協賛社離れで存続危機が伝えられた鳥栖は厳しい経営が続いている。そんな過酷な状況ではあるが、竹原社長は現有戦力については「1年あるのでユースから育った若手で世代交代を急速に進めないといけない。チャンスじゃないですか。本田風智にしても歩夢(大畑)にしても1年かけてつくれますからね」と期待を込める。19年度の約半分という20年度選手人件費だが、若返ったチームにも前向きだ。

今季は、特例措置でJ2降格がなく、来季を見据えた超長期の“トレーニング”期間と割り切るも1つだろう。規模は小さくとも大型補強に頼らない、生え抜きが軸の地元愛あふれるチームづくりへー。夢のモデルケースへ大きく舵(かじ)を切る転換点かもしれない。【菊川光一】

(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

◆菊川光一(きくかわ・こういち)1968年(昭43)4月14日、福岡市生まれ。福岡大大濠高-西南大卒。93年入社。写真部などを経て現在報道部で主にJリーグや高校野球などを担当、プロ野球などのカメラマンも兼務する「二刀流記者」。スポーツ歴は野球、陸上・中長距離。