新型コロナウイルスの影響で外出自粛の生活スタイルが定着しつつある今、全国で書籍の売り上げが好調という。元日本代表MF本田圭佑は先日、日本テレビ系「news zero」で「今は物理の本を読んでいます」と告白した。

Jリーグの選手も今、基本は自宅待機中。本田のように読書で自己研さんする選手に、セレッソ大阪の高卒新人DF田平起也(たびら・たつや)がいる。

昨年はU-18日本代表に入ったホープは、大阪・八尾市生まれで神戸弘陵高出身。5月10日に19歳の誕生日を迎える。まだプロ生活は3カ月程度だが、勉強意欲はベテラン顔負けだ。最近の自身のSNSでも読書など勉強の大切さを記している。

普段は時間があれば書店へ行き、著名人の自伝や新刊を大量購入するという。気がついた文章や語句には蛍光ペンで印をつけるか、iPhoneにメモをする。最近はビジネス書「20代に伝えたい50のこと」や、西野亮広「新・魔法のコンパス」を読破。これらは、ほんのごく一部にすぎない。

「今頑張っていれば未来はどうなるか分からない。努力の積み重ねが必然を生む」

「時間は全員に平等に与えられている。それをどう使うかで差が出て、差が開いていく」

「なぜ学ぶ姿勢が大切かというと、学んだ知識というのは自分から奪われることはない。うまくいかない時のヒントになる。これらは意識次第」

口をつく言葉に、人生の先輩であるはずの記者が感心する。SNSには人生観を記し、時にはプロ顔負けの長文もある。過去にW杯代表で活躍したMF中田英寿も読書好きで自身を磨いていた。アスリートにとって読書は、成功へのヒントになる場合がある。

田平は将来の日本代表入りが期待される。188センチの大型センターバックで希少価値のある左利き。C大阪に入団後もすぐにトップチームに抜てきされた。新型コロナウイルス問題で延期になっていなければ、2月26日のルヴァン杯ベガルタ仙台戦でプロデビューする予定だった。

初試合が幻に終わった直後に取材した際、本人は「試合がなくても、もっとレベルアップできるかもしれない。試合がなくてもやれることはあります」と穏やかな表情だった。

ちなみに「田平」という名字は珍しいが、父道男さんの故郷長崎に多いという。長崎出身の日本代表森保監督に聞くと「確かに田平町はありましたよ」という答え。調べると05年10月に新設合併され、現在は平戸市になっている。

親族に医療従事者がいる田平にとっては、今回の新型コロナウイルス問題で、改めてその仕事の大変さが分かった。チームの活動休止期間中の勉強になった点でもある。

この問題が収束していけば、Jクラブの練習は本格的に再開されていく。自主練習をきっちりこなした上で、読書などでパワーアップした田平はどう成長しているのか。頭も体も研ぎ澄まされた新人に、公式戦再開後はぜひ注目してください。【横田和幸】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

◆横田和幸(よこた・かずゆき)1968年(昭43)2月24日、大阪府生まれ。91年日刊スポーツ入社。96年アトランタ五輪、98年サッカーW杯フランス大会など取材。広島、G大阪などJリーグを中心にスポーツ全般を担当。