名刺代わりの1発で、ユアスタを熱狂させた。プロ4年目で開幕初スタメンを果たしたベガルタ仙台DF板倉滉(21)が、いきなりJリーグ初ゴールを決めチームを勝利に導いた。後半8分、MF古林将太(26)の右からのクロスを打点の高いヘディングでとらえゴールネットを揺らした。従来の3-4-3から、奇襲をかけ3-5-2システムに変更して臨んだ渡辺晋監督(44)は、開幕戦を4年連続となる完封勝利で飾った。

 期待の新星が、ホーム開幕の大舞台でいきなりベールを脱いだ。MF古林の右サイドからのクロスに反応。186センチの長身で跳び上がると、マークについた相手DFを頭3つ上回り、ほぼフリーの状態でボールをゴールに流し込んだ。「喜び方を迷ってしまった。後ろ来てくれているのか? 思わず振り返りました」。歓喜の雄たけびを上げながら広告ボードを軽々跳び越えるとゴール裏へ。歓喜のイレブンと抱擁を交わすと、MF野津田岳人(22)から手荒い祝福を受け歓喜に酔いしれた。

 セットプレー崩れで前線に残っていたことが奏功した。「すごくいいボールが上がってきた。高さを生かしたヘディングは自分の特徴のひとつなのでそこを出せたのは良かった。今までああいうゴールを決めてなかったので次につながる。開幕戦で決めて気持ちよかったです」と、Jリーグ初ゴールの感触を照れ笑いを浮かべながら振り返った。

 「サポーター席と距離が近くて最高の雰囲気でした」。今季、川崎フロンターレからレンタル移籍で加入。1月に森保ジャパン(U-21)に招集され2試合連続で決勝ゴールを決めており、サポーターの期待値も高まっていた。気さくで優しい性格で、川崎Fサポーターからもいまだに愛され続けている板倉が、一瞬でベガルタサポーターの心をわしづかみにした。

 板倉の「今季3発目」の決勝ゴールでチームの開幕戦の成績は、J1昇格を果たした09年以来、8勝1分け1敗と強い。開幕戦で勝ち点3を奪ったのは仙台を含めて5チームのみ。「チームの勝利につながるゴールを決められたのはよかったですが、隙があった場面も多々あった。守備のところをきちんとこなし、チャンスがあれば攻撃に絡んでいきたい」。板倉の一撃が、目標のトップ5入りへの号砲となった。【下田雄一】