岡山・倉敷市出身のサンフレッチェ広島主将MF青山敏弘(32)が複雑な胸中を明かした。

 西日本豪雨後、初めての公式戦となったガンバ大阪戦。「がんばろう広島」を胸に、前半から攻め立てて4得点の圧勝だった。

 前半7分、青山をアクシデントが襲った。相手DFが足の裏を見せてスライディング。だが、危険なプレーにも青山は1歩も引くことはなかった。結果、青山の右足を直撃してしまい、相手は一発退場。だが、このプレーにも青山が被災地を思った意味があった。

 「自分たちが先頭に立って行動していきたい。プレーや結果で元気づけられる方がいたら。あのプレーを最初に受けて(奪えるかクリアされるか)五分五分のボールに飛び込む、逃げないプレーを見せられた。きっと何か伝わったと思う」

 試合前の黙とう。直前になっても切り替えきれず、複雑な思いを抱えていた。「うまいことサッカーのことだけを考えることができなかった。練習でも集中できるのか難しかった」。青山の地元倉敷市も大きな被害を受け、戸惑いがあった。だが「何か伝えたい」という思いが青山を突き動かした。

 試合終了後、選手全員が「がんばろう広島」のTシャツを着て場内を1周。明るい音楽もなく、静かな会場にあたたかい拍手の音だけが響いた。青山は「スタンドを見たら(サポーターが)少なくて、どこか寂しい。僕たちも勝っても笑顔でいていいのか分からなかったし、サポーターの方も複雑だったと思う」と思いやりながら「でもお互い『ここから1歩踏み出すんだ』という確認し合えたシーンだった」。

 100人を超える犠牲者が出て、悲しみに暮れる広島県。だが、立ち上がろうとする強い力はこの一戦からも感じられた。「先頭に立って元気づけられたらいい」。主将として広島を引っ張る青山は、被災地の原動力にもなると心に決めていた。【小杉舞】