コンサドーレ札幌の補強戦略が変わった。来季加入が決定している大学生3選手は、7月に金メダルを獲得したユニバーシアード日本代表。

さらに法大の身長2メートル大型GK中野小次郎(3年)の21年加入もすでに内定した。高校、大学生を担当する元札幌MFの強化部・鈴木智樹スカウト(34)に、獲得成功の裏側を聞いた。【聞き手=保坂果那】

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--将来が楽しみな4人の大学生の加入が内定

鈴木スカウト(以下S) 僕が高校、大学のスカウト活動を本格的にするようになったのは去年から。それまでは予算的な問題でスカウト活動も難しく、アカデミー選手を中心に育成してきた。結果、MF荒野や深井、DF進藤らが今、主力として試合に出ている。だけど、クラブとしてさらなるステップアップということで、アカデミーの育成も大事にしつつ、全国から将来性のある選手を引っ張ってきたい、ということになった。現在は関東や関西の大学リーグのスケジュールを確認して試合を見に行っている。年間150試合くらい。大学生(が中心)なのは、明確に即戦力として。

--これまで有望大学生の獲得が難しかったのは、予算的な問題だけ?

鈴木S 正直クラブの魅力とか、地域性とか…。関東に魅力のあるクラブがあるのに、本州の選手が北海道に就職するって選択しにくかった。でもミシャさん(ペトロビッチ監督)のサッカーやクラブの方向性、将来性を感じてくれるようになり、(獲得が)うまくいっている。クラブがこれだけ大きくなり、素晴らしいサッカーをしていることで「札幌なら預けたい」「選手を育成してくれるクラブ」と思っていただける大学の監督やスタッフが増えた。

--今季、オファー後に他クラブへの練習参加を認めたことで、結果的に獲得できなかった選手もいた。クラブによっては、それをさせないことも。後悔は?

鈴木S 他クラブを見て選手が成長することもあるし、その上でウチに決めてくれれば最高だと思う。どこのクラブにも魅力的な環境や指導者はいる。それが正しいのかはわからない。

--大体大DF田中駿汰(4年)は加入内定後、6月のトゥーロン国際で初の代表入り。今月のU-22日本代表に大学生で唯一選出

鈴木S おもしろい選手だと思っていたけど、まさかこんなに評価されるようになるとは。3月に練習参加に来たのは3日間だったけど、雪が降って初日しかできなくて。コーチングスタッフは初日でおもしろいなって言ってくれたけど、それだけで決めるのってなかなか(難しい)。オファーって選手の将来を左右しちゃうことだし、選手が後悔しないように進めなければいけない。三上(GM)や竹林(強化部長)も数試合大体大の試合を見てくれてオファーに至った。

--法大GK中野は3年時でのスピード内定

鈴木S まず早め(10月)に練習参加が実現したのが良かった。初日でうちのスタッフも彼は間違いないとなり、それなら早めにこちらの誠意として伝えられたら、と。明確な返答締め切りは設けなかったけど、ウチのコンセプトや環境、GKコーチ赤池の指導に魅力を感じてくれて、ぜひ一緒にやりたいって返事をすぐくれて。早く決めることが札幌に対する誠意だと言ってくれた。そんなうれしいことはない。来年は特別指定として、可能な範囲でウチの練習に来てもらって、2、3年後、ゴールを守ってくれれば。

--日大MF金子拓郎(4年)は特別指定選手としてすでにリーグ戦デビュー。筑波大MF高嶺朋樹(4年)は下部組織出身の道産子

鈴木S 結局獲得してから、どう成長させるかが一番重要。花が咲かないこともある。獲得できたことを喜ぶのではなく、しっかりサポートしないといけない。理想は、ウチから日本代表や海外のクラブに行く選手が出てくるようにしていきたい。

--ご自身は09年現役引退後から育成スカウトに

鈴木S 僕なんて選手として活躍していたわけじゃないから、(関係者に)顔を覚えてもらうというところから。人間関係を築くところから始まった。知識と経験が豊富な三上や竹林がいろいろ教えてくれるし、みなさんに助けられながら。選手を見る時は、ミシャさんの素晴らしい指導を受けたらどうなっていくんだろうと想像しながら見ている。

◆鈴木智樹(すずき・ともき) 1985年(昭60)6月8日、岩見沢市生まれ。札幌U-18から04年にトップチームに昇格してプロ入り。現役時代のポジションはMFで主にボランチ。04年3月13日第1節甲府戦で開幕スタメンを勝ち取りJリーグデビュー。06年4月5日第7節草津戦で初得点を挙げた。08年限りで現役を引退。通算78試合2得点。09年1月に札幌強化部スカウト担当に就任した。

◆札幌の強化部 スカウト、強化部長を経て13年現職に就任した三上大勝GM(48)を中心に、京都や名古屋で強化を担当し、昨季就任した竹林京介強化部長(44)、鈴木智樹スカウト(34)の3人が主に活動している。