鹿島アントラーズと北海道コンサドーレ札幌が21日、カシマスタジアムで練習試合を行い、この模様がJクラブの練習試合としては初めて、Jリーグ全試合を中継するDAZN(ダ・ゾーン)でライブ配信された。

中継が決まったのは試合2日前。当初は鹿島の公式YouTubeチャンネルでの配信を予定していたが、Jリーグからクラブに「何か手伝うことはできないか」と連絡があったという。両クラブとリーグで「練習見学もできないサポーターのために何ができるか?」と話し合った結果、実況アナウンサーと解説者で伝える公式戦さながらのDAZNライブ配信が実現した。

急な決定に対応できたのには理由がある。カシマスタジアムの指定管理者でもある鹿島は、スタジアム内に中継室を完備しており、日頃からDAZNで配信する試合映像を自前で制作している。通常は12台のカメラで試合を撮影するが、急きょの対応で、カメラは5台。「とにかくサポーターに試合を届けたい」という熱意が、ライブ配信を実現させた。

中継出演のためスタジアムを訪れたJリーグの原博実副チェアマンは「いろんな情報を隠したい時期だが、鹿島と札幌が『(試合を)オープンにしていい』と言ってくれてありがたかった」と話した。ライブ配信をすれば当然、他クラブに手の内を明かすことになる。感染対策もあり、練習を完全非公開で行うチームがほとんどの中、「こんな時だから」という両クラブの心意気が表れた形だ。

試合は4-2で札幌が勝利した。敗れたが、CKから頭で得点した鹿島DF町田は「見ている人がいる、というだけでモチベーションが上がる」と中継に感謝した。試合時に広告が掲出されるLEDビジョンには、「#いまできることをみんなで」というスローガンが表示された。先の見えない不安を抱える人々に、Jリーグは“いまできる”エンターテインメントを届けていく。【杉山理紗】

○…Jリーグの原副理事長は、4月3日にリーグ戦が再開した場合でも、東京五輪直前にJ1の試合を組み込むプランがあることを明かした。当初は7月5日に五輪前のリーグ戦を終える予定だったが、1週間後の11日に試合を入れる可能性があるという。7月6日からは五輪代表の直前合宿が予定されており、この場合、各クラブは東京五輪世代の選手なしでリーグ戦を戦うことになる。またJ2、J3のクラブからは「4月3日に再開した場合も、五輪期間中に試合をしたい」と要望が来ていることも明かした。