最下位のベガルタ仙台が今季最多得点で悪夢を振り払った。12戦不敗のガンバ大阪にアウェーで4-0の大勝。8月8日のアウェー・ヴィッセル神戸戦以来、18試合ぶりに勝ち点3をつかんだ。先発から外れたDFシマオ・マテ主将に代わり、キャプテンマークを巻いたFW長沢駿(32)が、前半17分、同44分、後半30分にゴールを奪い、古巣相手に魂のハットトリック。クラブワースト2位の17戦未勝利(5分け12敗)から抜け出す原動力になった。

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あの日の涙を、満面の笑みに変えた。長沢は試合終了の整列後、審判からハットトリックの記念球を受け取ると、仲間たちと次々にグータッチ。喜びを分かち合い、「勝つことがこんなに気持ちのいいものなのかと忘れていたぐらい本当にうれしかった。僕1人で取ったゴールは1点もない。みんなに感謝しながら、逆にみんながすごく喜んでくれた。やっと勝ててホッとしています」。重圧から解放された。

副主将として、ストライカーとして、勝利に導けないふがいなさがあり、競り負けた10月28日のホーム神戸戦後の場内あいさつの際には涙があふれた。その悔しさを、払拭(ふっしょく)した。

仙台は基本布陣を8試合ぶりに4-3-3に戻し、序盤から攻勢。前半17分、DFパラのパスに抜け出したFWクエンカが、ペナルティーエリア深い位置からマイナスの折り返し。最後は待ち構えていた長沢が、左足でGKの頭上に突き刺し先制。同44分にはCKからヘディングで合わせ、後半30分にも右クロスを頭でたたき込み、チームトップの今季6ゴール目とした。

長沢はG大阪時代の18年4月4日、ルヴァン杯名古屋グランパス戦で4得点をマーク。リーグ戦初のハットトリックは特別な相手から挙げた。「本当に古巣に勝てたこと、3点取れたことはすごく自信になった。ガンバの選手にはいろいろ怒られたけど、それもうれしかったです」。最高の結果につなげ「今日の3点に関しては、すべてパーフェクトだと思います」と喜んだ。

03年のクラブワースト19戦未勝利を止めたのもアウェーG大阪戦だった。仙台は成績低迷、経営危機、MF道渕の解雇など歯車がかみ合わなかったが、ついに長いトンネルを抜けた。残りは7試合。18日のホームFC東京戦ではユアスタ初勝利をつかみ、来季につながる魂のプレーをサポーターに示す。【山田愛斗】

〇…負傷離脱していたDF柳貴博(23)が、5試合ぶりの復帰戦でJ1初ゴールを決めた。後半44分、長沢起点のカウンター。左サイドタッチライン際でMF石原からパスを受けると、中央に切れ込み、右足を迷わず振り抜いた。「あそこで抜け出した瞬間に普段だったらクロスを意識するが、ゴールを狙う気持ちしかなかった。何も迷わずにゴールに向かえたのがすごく良かった」。チーム4得点目でとどめを刺した。

▽仙台木山監督(18戦ぶり勝利に)「選手たちは、この期間苦しかったと思いますし、チームにかかわっている人たちも苦しいし、悔しい思いをしてきた。全員がチームのために、勝つために戦う姿勢を出せたのが一番大きかった」