<J1:名古屋2-2東京>◇第31節◇2日◇瑞穂陸

 サッカー日本代表の東京FW武藤嘉紀(22)が、スーパーゴールで新人のJ1年間最多得点記録に並んだ。1-2で迎えた名古屋戦の後半31分、前線で左に流れながら4人をかわし、角度のない位置から、左足で対角のゴール右隅に決めた。残り3試合で、史上初の新人得点王が視野に入ってきた。日本代表のハビエル・アギーレ監督(55)が視察した試合は3戦5発。5日にメンバーが発表される今月中旬の日本代表戦(14日=ホンジュラス戦、18日=オーストラリア戦)に弾みをつけた。

 パワー、テクニック、スピード、武藤のすごみが詰まっていた。1点を追う後半31分。1人で名古屋守備網を切り裂き、スーパーゴールを決めた。

 ゴール正面、ペナルティーエリアの外から始まった。こぼれ球を争い、DF闘莉王の激しいカットに屈せず力で押し出した。MF矢田を左足で巧みに切り返し抜き去る。スピードアップし、正面のDF牟田をかわしてペナルティーエリアに進入すると、DF矢野もかわした。左、左と流れて角度のない位置追い込まれたが、倒れ込みながら左足。最後もパワーで押し切ったシュートは、GK楢崎の左手をかすめ逆サイドのネットへ突き刺さった。

 GK合わせて5人の相手を手玉に取るゴール。利き足ではない左へと運んだのは意図があった。10月22日の広島戦で打撲した右太ももの痛みが消えていなかった。「思うように右足で打てない。だから左へ持ち込むようにしようと前半から考えていた。左は思いっきり打てる。100%の力で打つことができた」。右足が打てないのならと、けがを逆手に取って決めた。

 これでJ1新人最多得点タイ記録の13点。左右変わらない決定力がゴール量産の一因だ。利き足の右での6点に対し左足では5点目だ。アギーレジャパン1号も左足だった。利き足は右と公言しているが、実は利き手は左。「小さい頃から何も言われず、矯正されなかった。左足と関係あるのか分からないですけどね」。レフティーさながらのシュートで記録に並んだ。

 「正直、ホッとした。でも目指すのはもっともっと上。取れるだけ取って記録を更新したい」と、残り3戦を見据える。得点ランクでも1位の15点に2差の4位タイと、得点王さえ視野に入ってきた。視察した日本代表アギーレ監督の前では3戦5発。「彼はいい時期にさしかかっているね」と笑顔で話した指揮官から、5日発表の代表メンバーに選出されるのは確実だ。

 引き分けに終わり、アジア・チャンピオンズ・リーグ圏内の3位も絶望的となったが、W杯後から勢いは増すばかり。「代表の自覚はありますし、結果を残し続けないと選出していただけない」。Jと代表戦合わせて年内あと5試合。武藤のシーズンはクライマックスに入る。【栗田成芳】