今夏、フランス1部パリ・サンジェルマン(SG)残留を決めたフランス代表FWキリアン・エムバペ(23)が、“チームの顔”として躍動した。

20日のJ1川崎F戦に続き、日本ツアーに2戦連続先発。同僚メッシ、ネイマールがベンチスタートで休養する中、1ゴールを含む2点に絡む活躍で、J1浦和に3-0と快勝した。得点以外にも面白いように浦和守備陣をドリブルで切り裂いた。パリSGの主役は自分だと強烈にアピールした。

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文字どおり誰もエムバペを止められなかった。フランス時代はよく対戦していた前マルセイユの酒井ですら対応に四苦八苦。高速ドリブルでいとも簡単に逆を取られる場面もあった。

パリSGが1点をリードした前半35分、その時がやってきた。エムバペはベラッティからのボールをヒールで流し、左サイドのベルナトへとパス。そのままゴール左へと走り、相手選手を背負いながらベルナトからのリターンを受けた。くるりとターンで相手のマークを外すと、角度のないところから右足のコントロールシュートをGK西川の頭上に突き刺した。

チームの1点目も起点となったエムバペは、後半はベラッティに代わってキャプテンマークを巻いた。同14分にネイマールと交代するまでピッチで主役を演じ続けた。ゴールを許した西川は「本当に手が出ないところをあえて狙ってきているんだろうなというシュート。違いを(自分が出場した)45分間で感じることができた」と脱帽だった。

エムバペは今夏、少年時代からあこがれていたスペイン1部レアル・マドリード移籍ではなく、パリSGと25年6月までの新たな3年契約を結んだ。「母国を離れるのは良くない。センチメンタルかもしれないけど。それとチームの強化プランも自分の去就に影響した。クラブとお金について話したのは数分だったよ」と説明し、金銭面が残留の理由ではないと強調した。

メッシ、ネイマールの存在はもちろん大きい。しかしエムバペに巨額の残留オファーを出したパリSG・アルケライフィ会長は完全に同FW中心のチーム作りにかじを切った。エムバペは今季再び、愛着のあるパリから欧州の頂点を目指す。その意気込みを、遠い異国の地で示した。【千葉修宏】