いよいよ東京2020オリンピック開幕まで10日を切り、選手たちは、期待や緊張感が高まってきている頃だろう。

今回は、私がオリンピックで注目したい飛び込みの「海外選手」を紹介したい。

まずは、私の友人であり、初めてアメリカのオリンピック代表となったクリスタ・パーマー選手から。

彼女は6月上旬に行われた国内でのオリンピックトライアルで、3m板飛び込み個人と3mシンクロの2種目で優勝。実力者がそろう激戦の中、みごと代表権を獲得し、夢であったオリンピックへの出場を決めた。

アメリカは飛び込み強豪国の1つで、国内の代表争いも熾烈(しれつ)。そんな中、個人では、5月に東京で行われたワールドカップで銀メダルに輝いたサラ・ベーコンに勝って優勝した。確実に実力を上げてきた大注目の選手だ。


クリスタ・パーマー(右)と筆者(2014年、インディアナポリスで)
クリスタ・パーマー(右)と筆者(2014年、インディアナポリスで)

彼女との出会いは2014年の夏。インディアナポリスでのキャンプだった。

元々はトランポリン選手だった。しかし右膝のケガから続けることが難しくなり、20歳を過ぎて飛び込みに転向した異例のキャリアを持つ。当時、まだダイビングの世界へ来たばかりの彼女だったが、競技に対する姿勢は素晴らしく、コーチのジョンも一目置いていた。

向上心の塊だった彼女とはすぐに意気投合。約3週間、同じ部屋で過ごしたが、全くストレスが無く、むしろほとんど笑っていた記憶ばかりがよみがえる。

常に元気で明るく、そして、たまに子供っぽくイタズラを仕掛ける姿に、くじけそうになっている私は何度も励まされた。

そんな彼女の武器は、168センチの体格を生かしたダイナミックな演技。それに加え、高難度の技だ。世界の女子の中でも、早い段階で5154B(前宙返り2回半2回ひねりえび型)を「自分のもの」にし、ここ数年、国内外の試合で実戦経験を積んでいる。

さらに強さを示すのは、アリソン・ギブソン選手とのシンクロ種目でも、この演技を合わせてきていることだ。

日本の選手では、東京オリンピック3m個人に出場する三上紗也可も挑戦している技だが、女子で飛べるのは世界でも数人しかいない。この技を確実に決められれば、メダルも夢ではないところまできている。20歳で飛び込み競技に出合い、29歳でオリンピアンとなったクリスタ。ぜひ、トランポリンで培った空中感覚を存分に発揮し、オリンピックでも活躍してくれることを楽しみにしている。


メーガン・ベンフェイト(左)と筆者(2019年)
メーガン・ベンフェイト(左)と筆者(2019年)

次に注目しているのは、カナダ代表のメーガン・ベンフェイト選手だ。専門は10m高飛び込み。これまで国際舞台で数々のメダルを獲得し、2012年ロンドンオリンピック、2016年リオデジャネイロオリンピックでは、合計3つのメダルを獲得しているベテラン選手である。

彼女は高飛び込みに向いている小柄(155センチ)な体形を生かし、高難度な技でも簡単に飛んでしまう身体能力の高さが武器だ。しっかりと基礎が出来ているため、安定感抜群なところも勝負強さにつながっている。

32歳の彼女とは同年代。ジュニアの頃からの戦友だったが、今なお世界のトップとして走り続けていることに尊敬しかない。ぜひ、3大会目のオリンピックでも、表彰台での笑顔を見せてほしい。


男子高飛び込みに出場するトーマス・デーリー
男子高飛び込みに出場するトーマス・デーリー

そして最後に、イギリス代表のトーマス・デーリー選手(27)。彼のことは、あまり飛び込みに詳しくなくてもご存じの方がいるのではないだろうか。インスタグラムのフォロワー数は、なんと206万人。世界的にも超有名なスポーツ選手なのだ。

彼が飛び込みを始めたのは7歳の頃。始めてすぐに頭角を現し、国内外の最年少記録を次々に塗り替え、2008年の北京オリンピックには14歳で出場。2009年にローマで行われた世界選手権では見事、金メダルに輝いた。それからというもの、世界大会でメダルの常連となり、今なお注目され続けている、飛び込み界のヒーローだ。

今は10mをメインに活躍しているが、実は板飛び込みの才能も抜群。今回の東京オリンピックでは10mでの出場となるが、年齢とともに身体への負担も大きくなるのが高飛び込み。しかしどちらも飛べる彼なら、東京オリンピックの後もまだまだ活躍してくれるに違いない。これからも、目が離せない選手の1人である。


今回、私がピックアップした選手の他にも、活躍してくれそうな選手はたくさんいる。しかし、どの選手もみんな、オリンピックに向けて最大限の努力をして臨んでいることには間違いない。

無観客になってしまい、間近で見られないのはすごく残念だが、皆さんもぜひ、自分のお気に入りの選手を見つけるなど、さまざまな視点から試合を観戦し、オリンピックを楽しんで欲しいと思う。

(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)