柔道男子66キロ級世界王者の阿部一二三(20=日体大)が、柔道五輪(オリンピック)3連覇の野村忠宏氏(43)が設立した新会社「Nextend(ネクステンド)」と今春、マネジメント契約を締結したことが11日、分かった。

 柔道界で大学在学中の選手がマネジメント業務を委託するのは初めて。

 柔道界の申し子が「野村イズム」を継承する-。阿部は20年東京オリンピックを見据えて、より競技に専念するため契約に至った。「憧れの野村さんと挑戦したかった。五輪で結果を出すためにも心強いし、柔道を突き詰める環境にしたかった」と理由を説明した。柔道では学校や企業などの所属先が選手の窓口となって仕事を取捨選択するのが通例だ。同社マネジメント第1号となった阿部は所属を変えず、マネジメント業務だけを委託する形で契約した。

 2月に設立した同社は柔道選手のマネジメントのほか、国内外での柔道教室の企画・開催、企業とのコラボイベントなどで競技普及に取り組む。代表取締役の野村氏が経験と人脈を生かした“営業マン”となり、さまざまな交渉を行う。肩書だけの代表ではなく、会社の意思決定には必ず加わる。野村氏は「阿部選手には柔道界だけでなく、世界のスポーツ界で名を残すスーパースターになってほしい。大きな可能性を秘めているし競技普及の起爆剤の1つになる」と期待した。

 阿部は野村氏を超える五輪4連覇の夢を持つ。東京五輪の金メダル獲得は絶対的使命となり「まずは東京(五輪)で勝たないと始まらない。自分で決めた道だし、積極的に野村イズムを吸収したい」。20歳の若武者が決意を新たにした。

 ◆阿部一二三(あべ・ひふみ)1997年(平9)8月9日、兵庫県生まれ。6歳から柔道を始める。兵庫・神港学園高2年の時、17歳2カ月の史上最年少で講道館杯を制覇。16年12月のGS東京大会から無敗。17年世界選手権優勝。世界ランク1位。得意技は袖釣り込み腰。趣味は買い物。好きな食べ物は肉。家族は両親、兄、妹。168センチ。

 ◆起業した主な著名アスリート 

 ▽北島康介(競泳平泳ぎ五輪2大会連続2冠)09年6月に「インプリント」を設立。アスリートのマネジメントや水泳教室などを手掛ける。

 ▽為末大(陸上400メートル障害世界選手権銅メダル)14年5月に競技用義足開発メーカー「サイボーグ」を設立。為末氏の知見を生かし、20年東京パラリンピックで五輪記録を上回る義足の開発をしている。

 ▽鈴木啓太(サッカー元日本代表MF)15年10月に「オーブ」を設立。腸内細菌が多く含まれる大便を収集・分析し、アスリートの体調管理を支援している。