柔道元日本代表で東欧に位置するモルドバの代表コーチを務める石川裕紀氏(31)が、デザインした似顔絵イラストが注目を集めている。特徴をつかんだ柔らかいタッチが評判を呼び、国内の選手らから依頼が殺到している。

きっかけは3月中旬。石川氏が手掛ける人気ラインスタンプ「柔道部員ねこたろ」などを知る、東海大の後輩で16年リオデジャネイロオリンピック(五輪)男子60キロ級銅メダルの高藤直寿(27)から「SNSのアイコンを描いてほしい」との要望があった。新型コロナウイルスの影響で自粛生活となり、時間に余裕もできたため承諾した。スマートフォンを使用して約1時間で描き上げた。高藤がその画像をツイッターに投稿すると賛辞の声が相次いだ。ネット上で反響を呼び、男子66キロ級で五輪2大会連続銅メダルの海老沼匡(30=ともにパーク24)ら国内の強化選手らから多くの依頼があり、無料作成した。試作で男子代表の井上康生監督や鈴木桂治コーチらも描いた。自身のツイッターのフォロワーに似顔絵希望者を募ると、定員の10倍の応募があった。

石川氏は「小学生の頃からの特技がこの年になって喜ばれるとは思わなかった。まだ苦しい日々が続くが、少しでも心の癒やしになればうれしいです」と話していた。【峯岸佑樹】

○…石川氏は東京五輪でモルドバ柔道初のメダリスト輩出を目指す。知人の紹介で今年1月に代表コーチに就任し、現在は同国に滞在しながら男女17人を指導する。男子66キロ級で19年世界選手権銅メダルのデニス・ビエルに期待がかかり「五輪決勝で日本代表と対戦し、コーチ席で大学の先輩でもある古根川先生の横に座りたい。この試合が実現すれば、モルドバと日本への恩返しになると思う」と、初の大舞台に胸を膨らませた。

◆石川裕紀(いしかわ・ひろのり)1988年(昭63)7月26日、茨城県生まれ。5歳で柔道を始める。栃木・白鴎大足利高-東海大-了徳寺大職。60キロ級で11~14年全日本実業個人選手権優勝。12年グランドスラム東京大会準優勝。今年1月にモルドバ代表コーチに就任。左組み。得意技は一本背負い投げ。趣味は絵を描くこと。家族構成は妻。168センチ。血液型B。