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今日の1枚

日刊スポーツが蓄積してきた写真の中から厳選して紹介します。

2015年12月15日
2015年12月15日

15年12月、フィギュアスケートGPファイナル3連覇を達成し、スペイン・バルセロナから帰国してメダルを手に笑顔を見せる羽生結弦。


今日の出来事

安藤美姫(トヨタ自動車)がGP初優勝(2006年)

GP第1戦スケートアメリカ

◇3日目◇28日(日本時間29日)◇米コネティカット州ハートフォード

ミキティが荒川を超えた。ショートプログラム(SP)2位の安藤美姫(18=トヨタ自動車)が、ほぼノーミスの演技でフリー1位となりGP初優勝を飾った。合計192・59点は歴代3位の高得点で、トリノ五輪で荒川静香が出した日本最高得点を1・25点更新した。15位と惨敗した同五輪から8カ月、スケート界のアイドルが完全復活で10年バンクーバー五輪への第1歩を踏み出した。SP1位の浅田真央(16=中京大中京高)はジャンプでミスが出て3位に終わった。

◇ ◇ ◇

大歓声が心地よかった。安藤はフィニッシュをビールマンスピンで締めくくると、勝利を確信したかのように両手を突き上げた。久々に感じる充実感。「GP初優勝なんでうれしい。でも、結果より自分の演技が久しぶりにできたことが、すごくうれしい」。合計得点は、荒川静香(プリンスホテル)が金メダルを取ったトリノ五輪で記録したものを1・25点上回る日本最高の192・59点。かすかに瞳が潤んでいた。

完璧な演技だった。序盤の3回転ルッツ-3回転ループの連続ジャンプを鮮やかに決めると、波に乗った。得意のジャンプだけではなく、スピンとステップで4つのレベル4をマークするなど、目に見えるミスはなかった。「新たな安藤を見せたい」という言葉通り、見事に変身した姿を世界にアピールした。

トリノ五輪で屈辱の15位に沈んだ。「ジャンプ=安藤」の重圧を背負わされ、4回転にこだわり、そして散った。周囲の反応は一転した。全日本選手権6位での代表選出を蒸し返す声もあった。「五輪代表に選ばれたことに不満を持っていた人たちがいたことは分かっていた。今季は少しでも見返せるような演技をしたいと思っていた。今日はそれを証明できた」。

復活への道は楽なものではなかった。幼少時から師事する門奈裕子コーチのもとに戻った。当初は完全にジャンプの軸がずれていた。3回転どころか2回転ジャンプさえ、まともに跳べなかった。一からの再出発だった。新たに師事した振付師のモロゾフ氏のもとでは、厳しい練習とともに食事や体調管理も徹底。体重を5キロ以上も減らしたことで、キレのある滑りを取り戻した。

地道な努力と強い決意が、11個のジャンプをすべて成功させた。演技後、モロゾフ氏はロシア語で「マラリアス(素晴らしい)」と絶賛した。「トリノの失敗をもうしたくはなかった。昨季は頭で考えないと体が動かなかった。今季は自然に体が動く」と安藤も進化を実感していた。

安藤の優勝は、トリノ五輪後の背任事件で刷新されたスケート連盟の新強化体制への追い風にもなった。

日本フィギュア界にとっても10年バンクーバー五輪へ向けた最高のスタートになった。「最初から最後まで力強くスピードを落とさず演技できるように練習したい」。安藤は五輪で金メダルをつかむまで進化し続ける。