「真央リンク」を作りたい-。フィギュアスケーターの浅田真央さん(30)が、スケートリンク設立を目標に掲げた。1日、11月30日に出版された書籍に合わせた会見で「自分のリンクを作りたい」と明かした。子供たちへの環境整備、指導も希望した。9月に30歳を迎え、フィギュアへの恩返しへ、新たな挑戦を始める。

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浅田さんは30歳を迎えた心境を「『30』の『0』なので、ゼロからのスタートだと思ってます」と語る。競技者として数々の記憶、記録を刻んできた20代までとは違う、新たな一歩。それが「スケートリンクを作ること」だった。

浅田 子どもの時からコーチに「いつか真央のリンクを作ったらいい」と言われていたんですけど、なかなかそういう思いにはなれず…。来年から何か自分ができることがあるかなと思った時に、スケートリンクを作りたいという思いを皆さんに伝えて動きだすことで、その夢に向かって進んでいける。日本の子供たちに良い環境で滑ってもらいたい。そこで、アドバイスだったり、少しでも何か皆さんのためになることがあればやっていきたい。

17年の引退後、18年5月から全国を巡るアイスショー「サンクスツアー」を始めた。それはファンに感謝を直接伝えるためだった。そのショーは来春で一区切り。今後は子どもたちのためにも動く。以前からリンクの希望は持っていたが、30歳となり、使命感を実行に移す時が来た。

場所は利便性を考え、都内を中心に関東圏が候補になる。リンクだけでなく、記念品などを飾るミュージアムも併設するプランもある。構想段階で、これから具体的に動きだしていく。

都内を例にすれば、通年で滑れるリンクは4つ。しかし、来年の1月末で高田馬場のシチズンプラザが閉鎖されるなど全国的にも減少傾向。国内のフィギュア人気は高く競技者数も増加したが、育成する基盤は減る。育てる場として、必須であるのがリンクになる。

書籍は浅田さんを巡る100の言葉を集めている。「101個目の言葉を選ぶなら」と聞かれると、思案して言った。「『真央ならできる!』ですね」。語り継がれる14年ソチオリンピック(五輪)のフリー、演技直前に客席から飛んだ声だという。「真央ならできる」。それはリンクでも…。自らもそう信じて、動く。【阿部健吾】

○…書籍「浅田真央 100の言葉」(扶桑社)は03年から密着取材してきたフジテレビが100の言葉を厳選した書籍で、今回初めて取材に応じた父敏治さんが語る妻匡子さんと真央さんのことなどがつづられている。浅田さんは「私も知らなかったことがたくさん入っていて、特に家族からのメッセージは心に残りました。この本からたくさんの自分にエールをくれた感じがします」と語った。

◆アスリートと施設 選手、元選手が施設を造った例としては、サッカー元日本代表の本田圭佑が設立に関わった多目的スポーツ施設「ゾゾパーク ホンダフットボール エリア」(千葉県)がある。選手に因んだ施設名では三重県津市のサオリーナ(レスリング女子の吉田沙保里)、北海道旭川市のスタルヒン球場(プロ野球のスタルヒン)などがあるが設立に関係はなく、後から名前がつけられるケースが主。