22年北京オリンピック(五輪)の代表最終選考会を兼ねたフィギュアスケート全日本選手権の男子フリーが26日、決着する。

冬季五輪2連覇の羽生結弦(27=ANA)は25日、さいたまスーパーアリーナで行われた公式練習に参加。世界初の成功を目指し今大会、試合に初めて投入するクワッドアクセル(4回転半)の練習に再び取り組んだ。その大技について、10年バンクーバー五輪代表で、11年世界選手権銀メダリストの小塚崇彦氏(32)が成功のポイントなどについて語った。

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4回転半のキーワードとしては、スピード、傾斜、タイミング、パワーになります。それぞれは全てつながり、少しバランスが崩れるだけで「軸」が乱れてしまいます。

軸が乱れるのは2パターン。軸は真っすぐだけど、氷に対して体が斜めになってしまう状況。もう1つはぶんぶんと振り回ってしまう。真っすぐに跳び上がるが、竹とんぼのように1本の軸にならずに回転する軸が大きくなってしまう。

ジャンプは体の右軸で回ることが回転が始まる必須条件です。真ん中や左軸になってしまうと回転が解けて1回転や2回転になる「パンク」となる。回転数を増やすためにより大きいパワーを発揮すると、空中で右軸から左軸に「起き上がる」という現象がおきます。パワーが大きすぎてしまうと左軸にいきすぎ、パンクしてしまいます。

そこで、空中でちょうど良い右軸を作るために、どのくらい「起き上がって」くるのかを見越し、踏み込みの時に「傾斜」をどのくらいつけるかを考えなければいけません。逆にスピードがなければ、遠心力が働かなく、傾斜を作ることができないし、回転の初速を得られず、これも4回転半回りきりません。

試合では、通常時の120%の力が発揮されます。火事場のばか力です。羽生選手は、公式練習では、スピードを落とすことで、タイミングを見計らい、そのパワーに耐えうる軸作りを行っていました。試合でタイミング、パワー、スピード、傾斜をピッタリと合わせるためです。

がむしゃらに挑んでるように見えた19年GPファイナル時に比べると、回転スピードが遅かったことも含め、かなり本人の中にイメージができ、ポイントを押さえればできる気持ちが芽生えているようにみえます。

どちらにせよ、あの一瞬でこれらの要素を考えて体を動かしている「4A」は、並外れた感性がないとできない技です。