【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)12日(日本時間13日)=木下淳】フィギュアスケート男子の北京オリンピック(五輪)メダル個人銀、団体銅の鍵山優真(19=オリエンタルバイオ/中京大)が、来月スタートする22-23年シーズンのショートプログラム(SP)の振り付けをシェイリーン・ボーンさん(46=カナダ)に初めて依頼した。楽曲はイマジン・ドラゴンズの「Believer(ビリーバー)」に決め、5日間の現地指導を受けた。この日までに米国合宿を打ち上げ、演技は今月下旬にも新たな形でファンへ公開予定だ。

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前夜、大リーグ・エンゼルス大谷翔平の試合を観戦した鍵山は、初の渡米でボーンさんの拠点を訪れていた。3時間×5日間の専属レッスン。100超の候補から、携帯電話のCM曲としても昨年注目された「ビリーバー」に絞り込んだ。パートごと手取り足取りの指導に「いつかシェイリーンさんにお願いしたかったので、うれしかった。隣で動いてくれて意見交換できて毎日が濃くて楽しかった」と充実の表情を見せた。

北京五輪でメダル2つを獲得し、世界選手権では2年連続の銀。26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪で金を目指すと公言する中、次の4年間の1年目は「最も挑戦できる。大会成績の目標より、来季は新しい自分を。演じたことのない曲調、動きにチャレンジしたかった」と説明した。

かねて希望し実現した初タッグ。20年の国際スケート連盟(ISU)スケーティング・アワードで初代「最優秀賞振付師賞」に輝いたボーンさんは、羽生結弦の「SEIMEI」「天と地と」などで知られる。同じロス拠点のチェン(米国)も担当しており、五輪では3大会連続で金プログラムを手掛けた第一人者だ。

そのボーンさんも鍵山に才を感じており「ユウマは均整の取れたスケーター。彼が持つ美しい滑り、スピード、エネルギー、素質という強みを生かしながら、新しい、これまでと異なる個性を見せたい。創作に彼と一緒に飛び込む5日間は楽しかった」と映画スターのような笑顔で称賛した。

この初セッションで大枠は固まり、帰国後にジャンプを組み込んで調整する。SPは4回転サルコー、トリプルアクセル(3回転半)から、最後に初めて4回転-3回転の2連続トーループを入れる。連続を後半に回した昨季フリーの経験を応用し、得点増も図る。

今月下旬にも、ファンに向けて新たな形での公開を予定。「シェイさんと自分の良さが組み合わさった。心身を爆発させて、練習後に痛くなるくらい全身を使ったプログラム」という冒険作を米国から持ち帰る。

◆シェイリーン・ボーン(Shae-Lynn Bourne)1976年1月24日、カナダ・チャタムケント生まれ。アイスダンスの女性選手として、ビクター・クラーツとのカップルで94年リレハンメル、98年長野、02年ソルトレークシティー五輪に出場(最高4位)。03年世界選手権ワシントン大会では金メダルを獲得した。同年引退、プロ転向。07年から振り付けを始め、日本では荒川静香、鈴木明子、高橋大輔、宇野昌磨、紀平梨花や樋口新葉らも担当した。