「かなだい」こと村元哉中(29)、高橋大輔(36)組(関大KFSC)が念願の初優勝を遂げた。22日のリズムダンス(RD)を77・70点で首位発進すると、FDも1位の108・91点の合計186・61点。大会5連覇を狙っていた2位の小松原美里(30)尊(31)夫妻組を11・51点差で振り切った。シングル時代に5度の日本一を誇る高橋は男女を通じて史上初の「シングル&ダンス」2種目制覇を達成。2年連続の世界選手権(来年3月、さいたまスーパーアリーナ)代表入りが濃厚となった。

高橋が頭を抱えた。「やっちゃった~」。4分間のフィニッシュ直前、最後のリフトから村元を降ろした時に転倒した。とはいえ、転んだ程度では結果は変わらない。4連覇中だった小松原組との差をRDからさらに広げ、初優勝。高橋は「めちゃくちゃ喜びたかったのに…最後、気合が足りなかった。悔しくて眠れなそう。やけ酒しようかな」と笑ったが、村元は「それまでは今季一番の演技。2人には最高のクリスマスイブになった」と納得した。

結成3季目に掲げた目標だった。男子の10年バンクーバー五輪銅メダリスト高橋が、14年の引退、18年の復帰を経て19年にアイスダンス転向を表明。18年平昌五輪ダンス15位の村元とカップルを結成し、翌20年から第2章を始めた。1人の時はなかったリフトや2人で動きを調和するツイズルを一から習得していった。

以前はジャンプのため体を絞っていたが、反対にプロテイン摂取や1日4食で肉体改造した。跳ばない代わりにリフトで持ち上げるためだ。その中で肋骨(ろっこつ)にひびが入ったり、スピンで村元が倒れて脳振とうを起こしたり。曲がり道は頂点に続いていた。

全日本も初出場の20年は村元が左膝を痛め、21年は高橋が転倒。2年連続2位だったが、三度目の正直とした。FDでは2種のリフト、ツイズル、スピンで最高評価のレベル4を獲得。村元が「すごく落ち着いて1つ1つのエレメンツ(要素)に集中できた」と言えば、高橋も「成長を感じられた、リフト以外」と笑いながらも実感した。今季テーマ「深化」を証明した。

シングル時代に5度の全日本制覇(05~07、09、11年)を誇る高橋。ダンスとの2種目で日本一は史上初となり「イエス! シングルとは全く別物で、2人の演技がそろった時には1人以上に気持ち良く感じる。昔はダンスでも表彰台の真ん中に乗ることなんて想像していなかった。36歳になっても、まだまだ成長できるんだ」と喜んだ。

「かなだい」としては今年1月の4大陸選手権で銀メダルを獲得し、同10月のデニステンメモリアルで国際大会初優勝。一方で遠かった全日本のタイトルをついに手にし「私たちの今季の大きな目標が全日本優勝。大ちゃんと2人で初はうれしい。特別な日になった」と村元。「大」きな夢が「かな」った。【木下淳】

◆フィギュア全日本2種目V 過去の達成者はシングルとペアの天野真と小林正水、ペアとダンスの道家敏充がいるが、シングルとダンスを制した選手はおらず、高橋が初めてとなる。