<パCS第2ステージ:日本ハム9-4楽天>◇第4戦◇24日◇札幌ドーム

 さらばノムさん。楽天が日本ハムに敗れ、1勝4敗(日本ハムのアドバンテージ1勝を含む)で日本シリーズ進出を逃した。野村克也監督(74)は、8回2死二、三塁で2日前の第2戦に先発したエース岩隈久志投手(28)を投入する執念の采配を見せた。岩隈はスレッジにトドメの3ランを浴びてごう沈し、ベンチで涙を流した。今季限りで勇退する野村監督は、4年間教えたナインと、日本ハム稲葉なども加えた教え子たちから胴上げされ、5度宙を舞った。4球団24年の監督生活にピリオドを打った。

 札幌ドームの右翼席に陣取る楽天ファンの目の前で、野村監督が5度、宙に舞った。持ち上げようと山崎武、草野、渡辺直、田中らが監督を囲むと、三塁側ベンチから日本ハム稲葉や吉井投手コーチも走ってきた。両軍合わせての胴上げ。

 野村監督は「やだなと思った。照れくさい。あんな胴上げ、初めてだ。優勝の時にしか、今までなかった」と照れくさそうに言いながら「一緒になってお別れしてくれた。感無量。胸につまされた。教え子が野球界にいるのは、やっぱり縁だね。喜ばしいこと」と教え子の気持ちに感激した。

 “ノムニーニョ”な散り方だった。2点を追う8回2死二、三塁、打者スレッジの大ピンチには、エース岩隈を投入した。カウント0-1から内角直球を豪快に3ランとされた。それでも、執念の采配の結果に悔いはない。中1日の登板を志願した岩隈の心意気も、うれしかった。ベンチの野村監督は、すがすがしいとも言える苦笑いを浮かべていた。

 ボヤキ倒した24年間。すべてはナインの成長を願うからだ。「人を残すのが最終目標」と常に言う。ボヤいて育てたナインは、周囲の予想を超えるスピードで成長し、創設5年でCS第2ステージでも白星をマークした。貴重な経験を積んだ選手を残したのは、紛れもなく野村監督の手腕と功績だ。同監督は、宿舎に帰ると教え子たちを集め、話した。「このヘボ監督を4年間、恥をかかさずやってくれて、厚く御礼を申し上げます。来年以降、いずれ頂点を目指してください。チームが1歩ずついい方向に進歩していることは間違いない。あれだけ熱心に応援してくれる仙台のファンの方を向いて、一生懸命やってください」。ボヤキからの卒業通達だった。

 恒例の報道陣へのボヤキも、この日が最後。最後のボヤキは、いつもの2倍近い22分間だった。いきなり姿勢を正して「就職、お願いします。明日から浪人です!」と話し、報道陣の爆笑を誘った。ボヤキのポイントは去就だった。「わがまま言わせてもらえれば、もう1年やらせてもらいたかった。石の上にも3年、風雪5年。4年は中途半端だった。まだ選手にやってほしいことがいっぱいあった」。選手にもっと愛情を注ぎたい。強いチームを作りたい。勝利への意欲は、いささかも衰えていない。理想と現実とのギャップを赤裸々に語る「野村語録」は、最後まで独特のおかしさに満ちていた。【金子航】

 [2009年10月25日7時58分

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