今季の真央はトリプルアクセルだけじゃない。グランプリ(GP)シリーズ第4戦NHK杯が今日11日、札幌市内で開幕する。バンクーバー五輪女子フィギュア銀メダルの浅田真央(21=中京大)にとって、昨季の不調からの復活をかけた今季の初戦。たとえ武器のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)が失敗しても、総合力で補うことを誓った。

 3回転半について聞かれた時だ。浅田から意外な言葉が飛び出した。「トリプルアクセルだけではないので、他の部分で取りこぼしがないようにしたい」。3回転半こそ、浅田の調子を占うバロメーター。そして象徴だった。しかし、今季は少しだけ、その強い気持ちを軽くしてみた。

 10日の公式練習では、3回転半を15回以上跳んで、完璧だったのはわずか1回。しかし、氷上では笑顔を見せた。本番でも「回転不足かもしれないが、着氷すれば、他のところで補える」と、必ずしも3回転半の成功にこだわらない意識を見せた。

 昨季は最悪のシーズンだった。ジャンプやスケーティングを基礎から見直そうと、技術の大改良に取り組んだため、まったく結果を残せずに無冠に終わった。今季と同じGP初戦となったNHK杯では、自己ワーストの8位も記録した。

 しかし、スケート以外では、昨季から、少しずつ少女から大人への脱皮を図った。1人で新幹線に乗り、自宅のある名古屋から新しいコーチの佐藤信夫氏が拠点とする新横浜まで通った。すし屋にも1人でふらっと入ってみたこともある。今季は、7月に自動車免許を取得。練習リンクの中京大まで安全運転だという。

 つらいシーズンを乗り越え、公私ともに一回り成長した。その答えが3回転半だけからの脱皮だ。ショートプログラムは、安藤美姫や金妍児が世界女王になった時に使用した名曲「シェヘラザード」。伝説のイランのお姫さまを伸びやかに初めて演じる。フリーの「愛の夢」は昨季からのナンバーだ。大人の真央が、いよいよ幕を開ける時が来た。【吉松忠弘】