プロ野球界で2月1日は「元日」と言われる。12球団一斉に球音を響かせるキャンプイン。誰よりもこの日を待ちこがれていたのはソフトバンク王球団会長だった。「いや、あの選手はどうなるのかな、とかいろいろキャンプ前に想像しちゃうよね」。前日(1月31日)は早朝便でチームより人足先に宮崎入り。日南市にある故恭子夫人の実家の墓参りを済ませた。

リーグV奪回と4年連続日本一を誓うホークスにとって、若手の台頭も待ち遠しい。A組野手メンバーには新人のドラフト1位佐藤、2位海野、5位柳町に加え、育成3年目の期待の大砲・砂川リチャードも抜てきされた。昨秋のキャンプから目をかけてきた期待の怪力砲の動向に王会長も自然と足が向く。恒例となった12分間走には、サブグラウンドまで足を運んだ。

「苦しむ顔を見るのが好きなんだよ」。115キロの巨漢を揺らして走る砂川に目を光らせた。ノルマの2850メートルには遠く及ばず、1周目だけ勢いよく飛ばした姿に「リチャードは最初だけだったね。まあ、バットで目立ってくれればね」と、午後からのフリー打撃でも熱視線を送り続けた。47スイングでサク越えは10本。最後の1球は左翼場外に消える推定130メートル弾。スタンドから拍手が湧くと王会長は自らのことのように喜んだ。「リチャードは体のキレが出ると、飛距離も出てくるだろうね」。直接指導することはないが、背番号127を背負い初体験のA組で汗を流す砂川に温かいまなざしを向けた。

昨年のキャンプ初日。王会長は選手の動きに触発? されて室内練習場で約30メートルの距離を5本ほどダッシュした。全体メニューが終了した午後3時すぎ。「初日からあんまり入れ込むと明日に差し支えるからね」。名残惜しくも、納得したように王会長は球場を後にした。「初日から土曜日で多くの人に来てもらって最高だよ」。快晴の中、響き渡る「球音」が楽しくて仕方なかった。【ソフトバンク担当 佐竹英治】

工藤監督(左)が見つめる中、ティー打撃を行う砂川リチャード(撮影・菊川光一)
工藤監督(左)が見つめる中、ティー打撃を行う砂川リチャード(撮影・菊川光一)