たとえ結果につながらなくても、キラリと光るプレーがある。ここから大きな花を咲かせる選手もいる。2年ぶりに帰ってきた夏の甲子園。プロ野球に選手、コーチなどで40年以上携わってきた日刊スポーツ評論家の田村藤夫氏(61)が、10日の開幕試合から現地取材。球児たちの一挙手一投足に注目し、目に留まった選手、プレーを紹介します。
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私も甲子園を目指したものとして、みんなが憧れたこの場所で、球児の晴れ舞台を見られるありがたさを実感している。勝つ、負ける、抑えた、打たれたと結果は出るが、私はそこに至る準備、試合状況を理解する冷静さ、そして決断力、そうした部分に目を向けたい。
楽しみは、結果に直結しない可能性に出会えるか。東京ドームで見た西東京大会決勝では、国学院久我山の4番原田のスイングに感じるものがあった。それがヒットや長打につながれば、観戦者や読者の納得につながるのだろうが、凡退してなお、印象に残るスイングがある。捕手の立場からすれば、打ち取っても「紙一重だな」と、さらに怖さを感じる。そういうスイングに出会えるか。
投手にも、同じことが言える。ノースアジア大明桜(秋田)の風間が今大会の目玉とされている。どんな球筋か。打者のパワーに負けない球威かどうか、ピンチでも動じずに力のあるボールを狙ったところに投げ込めるか。そこをしっかり見たい。中京大中京(愛知)の畔柳、市和歌山の小園、天理(奈良)の達、高知の森木ら、好投手たちが今大会の出場を逃した。それでも、そうした素材を超える選手が出てくる、それも甲子園の持つ魅力だろう。
私はプロ経験者ではあるが、高校野球を見る時の基準を、ドラフトにかかるかどうかに置かずに見ようと考えている。高校生のプレーとして見事と言えるプレーはそのままを伝えたい。
センバツでは専大松戸(千葉)の吉岡が中京大中京との1回戦でダイビングキャッチに挑み、決勝2ランを許した。その専大松戸は甲子園に戻ってくる。今春の関東大会を制した際、吉岡は「同じ打球が飛んだら今度はどうしますか」と聞かれ「チャレンジします。今度こそ、捕れると確信できるだけの準備をしたい」と答えたと聞いた。
プロ野球ではそうそうない決意だろうと思う。負けたら終わりの一発勝負の大舞台で、控えの選手、親御さん、多くの仲間の思いを背に、勇気をもって飛び込めるか、冷静に判断した選択ができるか。61歳の私は球児たちの気持ちに心を近づけ、試合に没頭しようと考えている。
感染症対策として制約が多い中、必死に高校野球を続けてきた選手の真剣なプレーを、私も目を凝らして見たいと思う。




