大商大戦に先発した阪神メッセンジャー(2019年3月15日撮影)
大商大戦に先発した阪神メッセンジャー(2019年3月15日撮影)

阪神のマウンドには開幕投手のランディ・メッセンジャー投手が上がっている。マスクは正妻の梅野が被っている。15日、鳴尾浜球場で行われたプロアマ交流戦。相手は大学生だが、チームは本番態勢の構え。ペナントレースが近づいているのがヒシヒシと伝わってくる。確かにこの時期調整登板することはあっても、同球場でエースが2試合連続して先発するのは珍しい。鳴尾浜の話題を発信するコーナーの担当者としては、たとえ1軍の柱で、あまりテーマに縁のない選手であっても避けて通るわけにはいかない。取材する事にした。

相手は格下だ。正直言うと“手抜き”が頭をよぎった。果たしてどんな精神状態で、どんな内容のピッチングをするかに注目した。取り越し苦労に終わった。エースとしての自負だろう。己が何をすべきか心得ている。心掛けたのは自分のピッチングだ。邪念はない。マウンド上で捕手のサインに頷き、1球1球自分の持ち球を確かめながら実に丁寧に投げているのが伝わってきた。相手がプロであれアマであれ関係ない。開幕に向けての調整に怠りないのはさすが。甲子園球場から視察に訪れて、ネット裏から目を光らせていた矢野燿大監督も「自分のやるべきことに徹していましたね。すごく丁寧に投げていた」の好印象を持ったようだが、その内容もさることながら己の球を確認しながら投げていた精神状態に満足したのだろう。

集中力も問題ない。3回までは4三振を奪い1人のランナーも許さない。集中力の見せ場は4回だった。このゲームで唯一背負った2死走者二塁のピンチ。スコアは0-0。迎えた4番バッター。ストレート、変化球を駆使して攻めるも11球粘られて苦しんだが、集中力を失うことなく遊ゴロに仕留めてピンチを切り抜けた。正妻・梅野から見たメッセンジャーは「ほとんど首を振ることなく投げてくれた。追い込んでからのラインも間違いはなかったし、変化球のコントロールも相変わらず良かった。これから、もっとストレートも走ってくると思います」と見た。今季初バッテリーを組んで手応えをつかんだようだ。

メッセンジャーの登板は予定通り。前回の教育リーグ中日戦が9日だった。公式戦の登板間隔、中5日をにらんだマウンド。また梅野とは昨年28登板中27試合でバッテリーを組んでいて、これもペナントレースを考えた起用。着々と進む開幕準備。捕手出身の矢野監督の「バッテリーって組んでいる、組んでいないで多少の違和感がなくはない」は的を射ている。捕手はコンビを組む投手のことを十分に把握しておかないことには、良いリードはできない。そう、バッテリーと言えば、その試合の勝敗の7割を握っていると言われる大事なポジション。準備を怠るわけにはいかない。

次回は中6日。エースのシーズン前最終登板は、順調にいけば開幕の舞台となる京セラドーム大阪で行われるオリックス戦(22日)になる。ひとまず、15日の投球内容を振り返ってみる。6回66球、被安打2、奪三振5、無四球、失点0。プロ野球チームのエース。相手の大学生を考えれば当たり前かもしれないが、これだけ自分の投球を考え、確認しながらしっかり投げ込めば納得のピッチングが出来たはずだ。

「いつも(毎年)シーズン前にやってきたことを続けてきたが、今日はいいところでボールをリリースできたし、コントロール良く投げられたので、収穫があったね。次からはナイターが多くなるので、朝はもっとゆっくり寝ておこうかな」

メッセンジャー、最後はジョークで締めくくる余裕のポーズ。今シーズンが10年目。日本の野球は知り尽くした。もう、ペナントレース同様の間隔で調整した。正妻・梅野とのバッテリーも組めた。自分のピッチングもしっかり確認できた。準備は万端だ。さて、ウエスタン・リーグは15日に開幕した。鳴尾浜は19日から幕開けする。鳴尾浜通信、今季も阪神の情報を中心に各チームの注目される若手の成長を楽しみに球場通いをします。【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)

大商大戦のグランド整備中、笑顔を見せる阪神メッセンジャー(2019年3月15日撮影)
大商大戦のグランド整備中、笑顔を見せる阪神メッセンジャー(2019年3月15日撮影)