「ルートインBCリーグ、福井新球団の新しい球団名は…こちら!福井ワイルドラプターズ、に決定いたしました~!」

令和元年12月12日、午後9時2分。野球界の歴史的瞬間だったかもしれない。独立リーグだろうが、NPBだろうが、関係ない。応援するファンにとって、チーム名変更は極めて重大な案件だ。BC福井新球団は今回、それをネット動画のライブ配信で発表した。

「らしい」方法だった。今季までのBC福井の運営会社がリーグ加盟継続を断念し、動画サイトYouTubeの人気野球チャンネル「トクサンTV」が新たに名乗りを上げた。その全面バックアップの下、株式会社FBAが新運営母体として設立された。今回の球団名発表も「トクサンTV」で行われた。

「それでも、チーム名発表はどうしようか、けっこう悩んだんですよ」と小松原鉄平球団代表(35)は明かす。昼間に記者会見を開き、新聞やテレビでしっかり取り上げてもらう-。オリオンズからマリーンズ、ホエールズからベイスターズ。それが「普通」の新チーム名発表だった。

発表の放送時間は夜9時を選んだ。「昼間にも動画を配信するので、少しでもそれぞれの動画が埋もれないようにするために、今回は夜9時に設定してみました」と関係者は話す。SNSなどでしっかり事前告知にも励んでいた。

夜9時になった。トクサンTV出演の3人が「よし、始めよう」と声を張り、ライブ中継が始まった。都内某所の一室。現場に立ち会ったメディア関係者は私だけ。いや、その考え方がもはや時代遅れなのだろう。ネット動画はいまや、世を動かす大きなメディア。この球団名発表も、リアルタイムで4万人以上が視聴していた。

中継途中に、続々とコメントが書き込まれる。「ユニホームやロゴはどうなりますか?」と質問が来ると「黄色を使うのは決まっています」と小松原代表がすぐに答える。ピッカピカの新球団に、双方向で続々アイデアが生まれる。いつか、NPBでもこんなシーンが見られるのだろうか。

今回は、球団名もSNSで公募された。500人以上が応募。肉食恐竜に由来する「ワイルドラプターズ」の“ドンピシャ”案はなかったが、多くの意見を参考にしたらしい。中には「福井エチゼンガーニーズ」なんて案もあったとか、なかったとか。

私も実名SNSでこっそり応募していた。福井といえば恐竜、ソースカツ丼、メガネ、永平寺…と悩みながら「トクサンTV」の革新さを強調してみたらどうか、とふと思った。革新的、脱・既存、逆転の発想…。逆転の発想? コペルニクス的転回?

そんなわけで「福井コペルニクス」で応募した。NPBを目指して、今までにない自分を切り開こうとするBCリーガーを表現してみた。実はちょっとだけ、選ばれそうな気がしていた…。【金子真仁】